メスと銃を操る「闇の外科医×ハイスペ男子」が現代日本の闇を暴く…話題の新作漫画について作者に聞いた
サイバーエージェントが運営する縦読み漫画スタジオ「STUDIO ZOON」から、新作縦読みマンガ「BLACK SURGE」(ブラックサージ)が8月10日より連載開始。医師と兵士……戦場帰りの二つの顔を持つ男が、現代日本を震撼させる新作漫画について、原作・医療監修を務める津田彷徨さんにインタビューを行い、本作に込められたテーマや主人公のキャラ設定など創作活動の舞台裏を聞いた。 【漫画】本編を読む <漫画作品のあらすじ> 紛争地帯で治療を続ける天才医師、九条凪(くじょう なぎ)。 恩人である義父の治療のため、祖国日本へと帰国するが、義父は何者かの手により殺害されてしまう。その謎を明かすべく、凪は真相にメスを入れる――。 ■医師と兵士、近くて遠い二つの職業を兼ねる人間の目に映る“現代日本”とは? ――作品のテーマやメッセージについて教えてください。 【津田彷徨】現在、講談社さんのモーニング・ツーにて「高度に発達した医学は魔法と区別がつかない」という作品の原作及び医療監修をさせて頂いているのですが、あの作品は異世界という医療アクセスが極めて困難な場所において、極めて純粋な医師が道具もなにもない中で現代医療を行う物語となります。一方でこの「BLACK SURGE」は、ある意味においてまさに対となるような作品です。 異世界ではなく現代日本が舞台、そして主人公は医師でありながらも特殊兵であったという裏の顔を持つ青年。その意味では両作品はコインの表と裏の関係にあるかもしれません。そしてまさにこの二面性こそ、この作品の一つのテーマだと考えています。実際、この作品の主人公の職業は前述した通り「兵士」と「医師」。この二つはもっとも生死の現場に近い職業ですが、同時に命というものに対する価値観はある意味においては共通であり、またある意味においてはまったく異なるのではないかと考えます。 そんなもっとも近くて遠い二つの職業を兼ねる人間の目から見て、戦場ではなく現代日本はどのように映るのだろうかと考え、この物語の骨格が産まれました。物事や価値観は多義的であるという観点から、まさに矛盾する二つの視点を有した主人公を通し、少しばかり数奇な物語を体験していただければと思っております。 ――主人公・九条凪のキャラクター設定の背景を教えてください。 【津田彷徨】戦場産まれ、医療現場育ち。まさに前述した兵士と医師という二つの近くて遠い職業を併せ持つ青年です。日本人孤児である彼は、幼少時に戦場で日本から派遣された医師であり後に育ての親となる九条忠敬と出会い、結果として生死と隣り合わせの環境と、平和な日本という全く相反する環境で成長していくこととなります。その意味において、職業だけではなく環境もまた彼に対し、相反する二つの視点を授けたと言えるかもしれません。 そして彼の二つ名とされ、作品タイトルである「BLACK SURGE」。この言葉は作中での彼の二つ名ではあるのですが、サージに関してはSergeant(軍曹)とsurgery(手術)の一部から産まれた言葉であり、あらゆる意味において二面性を有するまさにその存在自体が矛盾のような青年となります。 ――現役医師としての経験がどのように作品に反映されていますか? 【津田彷徨】本作の主人公の大きな一つの側面は彼が医師であることにあり、だからこそ本作では様々な疾患や治療が作品内に登場することとなります。もちろん私自身は消化器内科医としていくつかの疾患を自身で監修しましたが、それ以外にもカテーテル治療や肘内障など、消化器以外の様々な病気や治療も登場予定です。 これらは私が現在も現役で勤務医をしている中で、様々な先生方と治療をともにした経験から描くことができた部分が大きく、同時にそのような循環器内科医や整形外科医の先生方の監修を頂くことができたことは望外の喜びと考えております。 ■紛争によって被害を受けている方々が存在する現状を知ってほしい ――紛争地帯での医療活動の描写について、どのようなリサーチを行いましたか? 【津田彷徨】海外での診療経験のある友人から話を伺わせていただいたり、また文献などを取り寄せたりという形です。ただそれらのお話を伺わせて頂く中で、現在も世界中の多くの地域では医療に関して極めて困難な状況にあり、そのことを目の当たりにし少額ではありますが一個人として少しでもお役に立てればと寄付などをさせて頂きました。 この作品のメインテーマではないのですが、現在もそのような医療にアクセスできない多くの方々、また紛争によって多くの被害を受けている方々が存在する厳しい現状をぜひ多くの方に知って頂き、困難な状況下で頑張っておられる方の背を少しでも押して頂ければと改めて思う次第です。 ――本作を通して読者に伝えたいメッセージはありますか? 【津田彷徨】色々と重いお話などもさせて頂きましたが、あくまで本作はエンターテインメント作品であり、まずは第一に楽しんで頂ける作品をと思い原作を書かせて頂きました。僕自身、自分の好きなものや原点……プロレスや戦場アクション、そして医療などあらゆるものを、まるでおもちゃ箱のように全部原作として詰め込ませて頂いております。 そんな自分の大好きを詰め込んだ原作を、作画の丸山先生とSTUDIO ZOONの皆様が数十倍面白いものに昇華してくださっており、完成した作品を私自身一読者としてワクワクとドキドキの思いとともに毎回楽しませていただいております。皆様もこのワクワクとドキドキを、作品を通して共有いただけましたら幸いです。『BLACK SURGE』ぜひ楽しんでくださいませ! 原作:津田彷徨/ネーム作画:丸山貴之