アマン京都「鷹庵」の味わいの秘密に迫る──監修する高木慎一朗に訊いた
アマン京都の日本料理、「鷹庵」は金沢の「銭屋」高木慎一朗が総料理長を務める。味の組み立てから、秋のメニューまで深掘りインタビューを行った。 【写真を見る】鷹庵の料理をチェック!
「森の庭」の季節の移ろいを表現する芸術的な日本料理
観光客が戻った京都で今、アマン京都の石門の外に佇む「鷹庵」が人気だ。同店の総料理長は金沢「銭屋」の2代目主人、高木慎一朗。日本料理に斬新なアイデアを盛り込んだ料理が評価され、国内外からコラボレーションのオファーが絶えず、自店に居ることも月に数日ほどという稀有な存在だ。グローバル基準で日本料理を世に広め、内外で評価される高木がグローバルでラグジュアリーなアマンから「鷹庵」の総料理長に招聘されたのは至極当然のことだったと言えよう。 高木にこれまでのキャリアを訊くと、最初は料理人志望ではなかったと言う。高校1年生の時に米国に留学し、帰国後に大学の教養課程に進学した。その直後、大学1年生の時に父が他界したことで「銭屋」を継ぐことを決意。料理の道へ進む決心をして「京都吉兆」の門を叩いた。当時からこの先、日本料理が発展するには海外マーケットが重要不可欠だと感じていたという。その時の意志は今も変わらず、今も率先して海外へ出向き、現地の食材を取り入れた日本料理に挑戦している。 「こちらの献立を考える上でアマンというブランドであること、半分以上は訪日観光客が来るのを前提に取り組んでいます。そこでふたつのルールを念頭に置いています。①『八寸』を作らない。②1つの皿に3種類以上の刺身はのせない。理由は、海外からのゲストにとって、1つの皿にたくさん料理をのせると何を食べたか覚えるのが難しいからです。だから何の食材を使っているか、どんな料理なのかは見ただけで理解できるようにしています。でも、食べると今までにない味わいがある。また、ここが森に囲まれた場所だから、季節を切り取ったような料理を心がけています」と話す。 二十四節気(にじゅうしせっき)に「走り」「盛り」「名残」を取り入れ、今という一瞬を表現した高木の料理は、最も京都らしい、しかし京都のいかなるレストランでも巡り合えない味だ。 ■三田紘司 高校卒業後に「京都吉兆」に入社以来、23年間吉兆一筋。「京都吉兆 松花堂店」「HANA吉兆」では料理長を務める。修業時代に出会い、公私共に親交を深めてきた高木慎一朗からは「技術的には言うまでのないことですが、微妙なニュアンスまで言葉で表さなくても理解してくれる唯一無二の存在」と「鷹庵」の料理長を任されている。 ■高木慎一朗 石川県金沢市で生まれ育ち大学卒業後、1年間の米国留学を経て「京都吉兆」で修業。「銭屋」初代主人である父の後をついで1999年に2代目主人となる。2016年ミシュラン二つ星を獲得。同年、「ルレ・エ・シャトー」に加盟。2007年から世界各国でコラボレーションイベントをはじめ、ニューヨーク日本総領事公邸晩餐会で調理を担当。2023年より「ルレ・エ・シャトー」日本韓国支部代表シェフに就任。 ■鷹庵 住:京都府京都市北区大北山鷲峯町1 TEL:075-496-1333 営:12:00~15:00、18:00~22:00 休:無休 URL:https://www.takaan.jp/
文・高橋綾子 編集と写真・岩田桂視(GQ)