昌平、浦和学院を5-0で圧倒 2大会ぶり5度目の決勝へ
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)埼玉予選第5日は6月12日、NACK5スタジアムで準決勝2試合が行われ、昌平と西武台が同16日のファイナルに進んだ。昌平の決勝進出は2大会ぶり5度目で、西武台は4大会ぶり12度目。両校が決勝で顔を合わせるのは初めてだ。 【フォトギャラリー】昌平 vs 浦和学院 中断中のプレミアリーグEASTで暫定3位、得点ランキングで首位の昌平は、6大会ぶりに4強入りした浦和学院を5-0で圧倒。力の差を見せつけた。 昌平の攻撃は、主将のアンカー大谷湊斗(3年)がボールを預かった瞬間に進軍ラッパが響き渡る。軽やかなドリブルに巧みな長短のパス、タメのつくり方は味わい深く、戦術眼も高度だ……。戦況に応じて懐にしまい込んだこれだけ多くの武器を取り出すのだから、相手にとってはやっかい極まりない。 大谷を中継した後は、いずれ劣らぬ才能豊かな4人のMF陣が、時にリズミカルに時にスピーディーに敵陣を巡回。優れた個の力の集積となる組織力は超高校級といえる。 昌平は前半15分、FW鄭志鍚(3年)が放った出色のスルーパスにMF三浦悠代(3年)が抜け出し、先制ゴールをものにした。 80パーセント超と思われるボール占有率で攻め続け、右2列目の山口豪太と左2列目の長瑠喜(ともに2年)が、外から鋭く仕掛けて浦和学院の守備陣に余裕を与えなかった。SBの旺盛な攻め上がりも強みのひとつで、左の上原悠都(3年)も右の安藤愛斗(2年)も効果的なサイドアタックで好機を演出した。 28分、山口からパスを受けた長の強打は左ポストをたたき、32分に敵ボールを奪った三浦のパスから、山口が放った一撃はバーをなめるように通過していった。圧倒的に攻めながらも、前半は1点しか奪えなかった。 これには玉田圭司監督も不満のようで、「相手に合わせた戦い方をした前半は内容が良くなかったし、2点目にしてももっと早く取らないといけなかった」とこの二つを課題に挙げた。 敵の急所をどう突いて切り崩すか。アプローチのやり方は前半と変わらないが、よりシュートの意識が後半は強くなったようなのだ。 山口と長が3本ずつ、大谷とMF本田健晋(3年)が2本ずつ打って攻勢をさらに強めた。2点目が入ったのが後半17分。確かに少しばかり遅かった。 大谷が動きながらゴール前で球をキープし、キックフェイントでマーカーをかわすと右足で左隅に蹴り込んだ。3分後には右の山口から大谷を経由し、最後は長が豪快にGKの頭上を破った。29分に大谷の鋭い弾道の中距離弾をGKが弾いて右CKを獲得。CB中松陽太(3年)がこぼれ球を回収し、交代出場したばかりのMF甲斐田裕大(3年)に渡すと決定的な4点目をゲットした。 玉田監督が「シュートの思い切りの良さが(後半の)得点につながったと思う。山口は何回もトライしていた」と振り返ったように、今大会3試合目にして背番号10にゴールが生まれた。 4分あった追加タイムも終わりが近づいた時だ。左の甲斐田からパスを受けると、少し間を置いて得意の左足で左隅に突き刺した。決まると間髪入れずにバックスタンドの応援団へ駆け寄り、誇らしそうにガッツポーズをつくった。 昨年度の第102回全国高校選手権準々決勝で青森山田に完敗した後、山口は「今のままでは普通の選手で終わってしまう。たくさん練習して普通ではない、えぐい選手になりたい」と復活を誓っていた。 昌平の下部組織である中学生年代のクラブチーム、FC LAVIDA時代は3年生の時、U-16日本代表としてルーマニア、ウズベキスタンの両遠征に中学生で唯一参陣。日本が優勝した昨年6月のU17アジアカップでは、1次リーグのインド戦でゴールも決めている。 しかしその後は疲労骨折や体調不良で精彩を欠き、全国選手権では大活躍した同級生の長とは対照的で、ほぼ何もできずに終幕を迎えた。 捲土重来の思いを胸に秘め、いろんなことに挑戦したそうだ。 「守備の背後を取る意識が高くなり、足元でパスを受けてからも抜きやすくなりました。カットインばかりではなく、縦への突破とシュートも意識している。筋トレは月、火曜が上半身、水曜は下半身を鍛えたことで当たり負けしなくなりました」 怪物と呼ばれた男の復調は、昌平にとって何とも心強いばかりだ。 浦和学院は県S2(2部)リーグながら、優勝候補の一角だった聖望学園を3回戦で倒すなど、快進撃を続けてきた。しかし前半こそ1失点でしのいだが、後半は12本のシュートを浴びた。攻めても後半39分、左CKからFW佐藤大心(3年)が放ったヘッドが唯一のシュートで、25大会ぶり3度目の決勝進出はならなかった。 昌平は過去、決勝に4度進んで4連勝してきた。 玉田監督はその最終決戦に向け、「まず気を緩めないことだ。決勝と思わずに戦い、やるべきことをしっかりやることが大切」とイレブンに訓示を送った。 大谷は浦和南との昨年の準決勝で、1-2とリードされていた後半39分の土壇場に同点ヘッドを決めたが、PK戦で屈した。「去年の悔しさを一番よく知っているのが自分なので、ここまできたら昌平らしいサッカーをやって優勝するだけです」と大黒柱は西武台とのファイナルでも、チームの心臓部としてフル稼働する心意気を示した。 (文=河野正 写真=会田健司)