第1話タイトルは「悪意」がダブルミーニングに

　第1話のタイトルは「悪意の所在」でダブルミーニングになっていた。悪意は法律用語では「事実があると知っていること」を意味し、よこしまな意図を指す一般の用法と異なる。誰が紗江を殺したのかという問いは、紗江の自殺に決定的な役割を果たしたのは誰かと言い換えられる。「知っていたかどうか」が自殺に追い込む意図とつながっていたかがポイントだった。「死ね」と送った遼はグレーで、会社側は限りなく黒に近いものの、それだけで自殺させたとまで言いきれない。最後に背中を押したのがカウンセラーであるますみ（美波）の「頑張って」だったのは強烈な皮肉だった。 　亮子はこうした意図を見抜いて、当初から遼は犯人ではないと想定した上で、事件の背景を探ったのだろう。カウンセラーにかかっていたことが、被害者にマイナスにはたらく可能性も頭にあったかもしれない。モンスターめいた亮子の洞察は観察眼に裏付けられており、社内への潜入捜査は証拠収集もさることながら、事件の真相を見極めることにあったのではないか。 　失敗を「盛り上がってきた」と笑う強メンタルに加えて、他の弁護士にないもので亮子が持っているのは「毒」だ。それはときに致命的なダメージを与えるほどの破壊力を持ちうる。弁護側の証人であっても、「嘘つき」「人殺し」と本人にだけ聞こえるようになじり、電気ショックのように大声で加害側企業を糾弾する。言っていることは間違っておらず、一瞬のことなので相手に反論の隙を与えない。 　モンスターである亮子が何を考えているか、また、謎のコンビニ店員・城野尊（中川翼）や父の粒來春明（古田新太）ら彼女を取り巻く人間関係は追って明らかになるだろう。ひとまずは、次週も観たいと思えるリーガルドラマの主役が登場したことを喜びたい。