【高校野球】今春センバツ21世紀枠出場・別海の中道航太郎、野球を引退し祖父・父と同じ漁師の道へ
今春のセンバツ高校野球大会に21世紀枠で出場した別海の前主将・中道航太郎(3年)が、漁師の道に進むことを決めた。2年秋の全道大会では、札幌ドーム(現大和ハウスプレミストドーム)で“高校生第1号”の本塁打を放つなど主砲として活躍。大学で野球を続ける道もあったが、一日でも早い地元への恩返しのために第一線から退く。 悩み抜いた末の決断だった。「大学野球をやるかすごく迷った。でもやっぱり父の漁師を継ぎたいという気持ちがあって、それを早く実現したかった」。中道が選択したのは祖父、父と同じ漁師への道だった。 センバツでは、人より牛が多い町、そして史上最東端からの甲子園出場校として全国から注目を浴びた。2季連続の聖地を目指した今夏は、北北海道大会初戦で敗退。夏の甲子園をテレビ観戦し、「本当にここでプレーしてたんだなとか、夏も出たかったなとか思いながら」進路を熟考した。野球か、漁師か。結論が出ないまま秋を迎えようとしている中、最後に「地元愛」が上回った。 「甲子園出場は自分の中で生涯NO1になるような経験。それくらい大きな出来事。改めて考えると、やりきったと思えましたね」。センバツ出場時点で町民などから集まった寄付金は町の補助5000万円と合わせて1億円超。「ものすごい支援をしていただいた。次は自分が地元で働いて、恩返しをする。地元の力になりたい」と、8月下旬に野球“引退”を決めた。 高校卒業後は鹿部町の漁業研修所に通って各種資格を取得し、ホタテ、サケ、ニシン漁を営む父・大輔さんの下で早ければ来年11月に漁師デビューする。高校野球を終えるまで生魚が苦手だった中道だが、すでに克服済みで「魚が食べられない漁師はダメじゃないですか。回転寿司に行ったら玉子とツナばかり食べていたけど、今は魚も食べられます。好きになりましたよ」と漁師になるための準備を着々と進めている。 同級生で大学でも硬式野球を継続するのは、背番号4の千田涼太と同6の影山航大のみ。他は就職や大学などでそれぞれの道に進むが、かけがえのない仲間との思い出は色あせない。「最高のメンバーでしたね。このメンバーだから歴史を変えられた。この町から甲子園に行けたんだから社会人になっても不可能なことはないんじゃないかと思っているので、いろんなことに挑戦したいです」。野球に未練はない。大好きな別海町のために、大海原に出航する。(島山 知房) ◆中道 航太郎(なかみち・こうたろう)2007年1月6日、別海町生まれ。17歳。別海野付小3年時に野付ベイスターズで野球を始める。野付中では軟式野球部でプレー。別海では1年春からベンチ入りし、2年秋の全道大会2回戦で本塁打を放つなど、4強入りに貢献した。好きなプロ野球選手は巨人・岡本和真。右投右打。家族は両親と弟。
報知新聞社