【前編】麒麟・川島が300年将棋に打ち込み努力してきた吸血鬼が主人公の漫画『バンオウ-盤王-』を推すワケ 原作・綿引智也&作画・春夏冬画楽×麒麟・川島明鼎談(『週プレNEWS』ロング版)
★『バンオウ-盤王-』誕生秘話 川島 キャラクターのルックスもそうなんですけども、そもそも『バンオウ-盤王-』はどうやって着想されたんですか? 綿引 当時は漫画の連載を目指してネームを描いていたんですけど、担当編集さんに見てもらって、評価してもらったりアドバイスをもらったり。まあ、あまりうまくはいってなかったんですよ。 で、悩んでいる時に編集さんが「こういう作品見てみたらいいんじゃない?」と、オススメの海外ドラマを勧めてくれまして。その中に『クイーンズ・ギャンビット』っていう作品があったんです。それがとても面白かったので、「チェスいいな」と思って。でもチェスは日本では馴染みが薄いので、「将棋にしよう」と思ったのが始まりだと思います。 川島 ...吸血鬼はいつ来たんすか? 一同 笑 綿引 将棋を描くとしたらテーマが必要だなと思ったので、「努力が才能に勝つ」というテーマでお話を作ろうと思ったんです。...で、これは私の個人的な考えなんですけど、極端な話「努力は真の才能には勝てない」と思ってるんです。本当に才能がある人は、結局努力もするから。 川島 同じように努力した分、成長されるから。 綿引 はい。「人間の時間は平等だから勝てない」と思っていて。だからせめて「時間が不平等だったら勝てるかもしれないな」と。たとえば、「何百年も将棋のために努力を続けている人だったら勝てるかな」...と。でも人間はそんなに生きられないから...なんか、「化け物にするしかないな」って。 川島 化け物にするしかない(笑)。 綿引 それで吸血鬼が主人公になりました。 川島 なるほど。なんか結構シビアなお考えですね。努力だけでは天才には勝てない。真の天才はすべからく努力してるってことですよね。 綿引 そうですね。もちろん、天才は天才で素晴らしいと思うんです。『バンオウ-盤王-』の主人公は天才じゃないですけど、作中にはさまざまな天才が登場しますし、特に今は天才が持つ素晴らしさや面白さも描いていこうとしているつもりです。 川島 なるほど。春夏冬先生はどこから参加されたんですか? 春夏冬 私も当時試行錯誤していた時期で、そこに編集さんから綿引先生のネームを勧められたんです。読んでみたら、将棋漫画なんですね。将棋といったら普通は「和」じゃないですか...でも、主人公は幽霊とか妖怪とかじゃなく、まさかの「吸血鬼」!? 和と洋をミックスするという発想が「面白いです」とお伝えしたら、「作画のほうをやってもらいたい」というありがたいご提案をいただきました。 綿引 ...「洋」でよかったです。「和」だったら嫌だった可能性もありますからね(笑)。 川島 そうですね。「和」の妖怪やったらその可能性も(笑)。 春夏冬 いやいや、そんなことはないですけど(笑)。「和」の将棋と「洋」の吸血鬼というアンバランスさというか。でもそのアンバランスさが独特な読み味になっているところもあって、将棋というジャンルに引っ張られない、作画の自由度を持たせてくれてるなと思いました。「和」だったとしたらもう、なんか黒と白とかの話になってきちゃいそうなんですけど、「洋」が入ってくると、「もうなんか金髪でもいけるかな...」とか(笑)。 川島 確かに、世界観が広がりますね。 春夏冬 色の部分で、結構その「ザ・和」みたいなところではない部分で遊べるな、と。あとは、面白いのはもう絶対に面白いっていう実感があって、さすがのネームだなと。そこで大変ありがたいご提案というか、作画の担当を受けさせていただきました。 川島 春夏冬先生のデザインがすごいなと思いますね。やっぱり黒髪じゃないんだなとか、目が赤いとこだとか、だからサングラスしたり色々やられてるんですけど...けっこう吸血鬼ってバレやすい要素が(笑)。 春夏冬 これは私のミスですね(笑)。 川島 ミスじゃないですよ(笑)。やっぱデザインめっちゃカッコええから。そこはやっぱ男女問わず食いつくルックスになってますもんね。