【前編】麒麟・川島が300年将棋に打ち込み努力してきた吸血鬼が主人公の漫画『バンオウ-盤王-』を推すワケ 原作・綿引智也&作画・春夏冬画楽×麒麟・川島明鼎談(『週プレNEWS』ロング版)
★漫画を超え始めた現実 川島 ちょっと聞いてみたかったんですけど、野球であれば大谷選手、将棋では今や藤井聡太8冠であるとか、漫画を超えた存在が現実に出てきてしまうということに関しては、どう思われていますか? 綿引智也(以下、綿引) いや...難しいですね、やっぱりそれは。「藤井さんのほうがすごい」というようなことを、コメント欄で見かけることもありますし、それはその通りですし。 川島 そうですよね。 綿引 それはちょっと悩ましいところではあります。『バンオウ-盤王-』の企画を練っていた頃の藤井さんは2冠だったんですが、連載中に8冠制覇とかやっちゃって、大変なことになったなぁって思います。 川島 そうですよね。 綿引 漫画の中で、現実よりも小規模なことをやっちゃってるワケですから、そこの苦しさというのは正直ありますね。 川島 今、将棋漫画と野球漫画、一番苦しいんじゃないかって思うんです。漫画でも「ちょっとこれは描きすぎやで...」って思われていた天才が、実際に現れるようになっちゃったので。 綿引 これまでの将棋漫画では羽生さんをモデルにした天才が登場してきましたが、これからは藤井さんがモデルになっていくかもしれませんね...。 川島 ですよね。藤井さんは今一番強い、脂が乗ってる時期ですから。でも、現実社会でも強い棋士の方がドラマを生み出しているっていうのは、ええことでもあると思います。 藤井さんのおかげで将棋に興味持ったという方もいっぱいおられると聞きますし、『バンオウ-盤王-』を読んで「将棋スゴいな」と思った人もいると思います。僕、竜王戦の賞金なんて『バンオウ-盤王-』で初めて知りましたからね。「ビル直せるくらいなんや!」って。 ――月山が竜王戦に挑む動機が、賞金でしたからね。 川島 ああ、そうですね! 守りたいもののために始めたわけですからね。でもそれが途中で叶ってからは、さらに純粋に将棋に向き合っていく流れになって。 だから月山が闘うライバル像も、すごく丁寧に描かれているんだろうなと思うんですけど。彼らのルックス...見た目というのは、綿引先生が決められているんです? それとも春夏冬先生が? 綿引 なんとなくのイメージはネームの時からあるんですけど、それを受けて春夏冬さんにほぼほぼお任せしています。 川島 いいルックスですよね。やっぱいい漫画ってライバルがかっこいいので。