世界首位独走語学アプリDuolingo、CMOが語った広告哲学と「優先指標」
最重視は「デイリーアクティブユーザー」
宮武氏からの「これまで行ったキャンペーンで一番好きなものはなにか?」という質問に対するオーサード氏の答えは「Love Languageです」。 これは、違う言語を話す複数の独身男女が真の愛を見つけるためにDuolingoを使って交流する、という恋愛リアリティショーを模した偽番組の予告編CMの放映で、エイプリルフールに行われたキャンペーンである。文化的な要素もあり、Duolingoの楽しさ、そして「人格」がわかるものだったという。 それではキャンペーンのゴール設定はなにか、という質問へのオーサード氏の答えは、「大事にしているのはブランドの認知向上」。それを測定するため、各キャンペーンでオーガニックインプレッションをそれだけ獲得できるかを見ているという。 「Duolingoは楽しいブランドであり、楽しいキャラクターがいる。そして楽しいプロダクトなわけですから、マーケティングも楽しくなくてはいけない。私たちはそういうストーリーを伝えている。そしてソーシャルプラットフォームで人々に見つけてもらい、共有してもらうことでオーガニックインプレッション数を上げていく。これが最も確かなやり方だと思っています」 また、フォーカスしているのは新規ユーザー獲得か、既存ユーザーのリアクティベイトか、という質問に対しては、「マーケティングチームの役割は、ブランド認知を高めて新規ユーザーを獲得するだけではなく、ユーザーに毎日レッスンに来てもらうようにしていくこと」としたうえで、一番重視しているのは「デイリーアクティブユーザー」だと回答した。 ソーシャルメディアの利点は、レッスン受講へのリマインダーにもなることで、Duo(Duolingoのイメージキャラクター)がTikTokでなにかやっているのを見るたび、「そうだ、今日のレッスンやらなきゃ」という行動につながっていくというわけだ。
日本固有CM「デュオリンゴ ゴロゴロ言語が学べる」
先に述べたように、日本でも急成長しているDuolingo。日本はDuolingoのマーケットのトップ10に入り、この3年半で会員数は10倍にも増えているという。 日本でのマーケティング施策について質問が及ぶと、日本特有のものとして、テレビコンテンツに対する投資を挙げた。海外ではテレビはそれほど重要視されていないが、日本ではブランドの信頼を得るためにテレビが一般的に用いられていて、ユーザーベースの拡張に功を奏しているという。 そうした理解のうえで展開したのが「デュオリンゴ ゴロゴロ言語が学べる」という全国CM。Duolingoはゴロゴロしながら、プレッシャーを感じることなくリラックスして語学学習ができる、というアプリの楽しさをアピールした。 また、オーサード氏は、必ずしもマーケティングを広告として考えないことが重要だと指摘した。 「広告は過去の時代のもの。やはりマインドセットが変わってきていると思うんです。人々は売りつけられるのに疲れている。求められているのは、本物の、信頼できるブランド、そして何かを売りつけようとしないブランドです。それはまさにDuolingoがやってきたこと。 自らのストーリーを伝え、人々の笑顔を作り、売りつけることはしない。そして人々が学びたいと思ったときにブランドを思い出してもらう、そんなアプローチを取っています。こうすることでエモーショナルな繋がりができると思っているんです」 ソーシャルメディアでDuolingoを見る人たちは必ずしも言語を学びたい人だけではない。ただ、ブランドを面白いと思ってもらい、好奇心をもってDuolingoに注目してもらう。そしてそれが最終的には学習に繋がっていく。 「それが我々のマーケティングのやり方です」。世界的な躍進を続けるDuolingoのマーケティング戦略について、オーサード氏はこのように締めくくった。
Forbes JAPAN 編集部