【石川の地域商社】観光物産振興の手本(12月23日)
石川町の観光物産の振興を目指す一般社団法人「地域商社SAKURAIZE(サクライズ)」は、設立から1年を迎える。町観光物産協会を衣替えし、地域商社を名乗って商品開発、販路開拓に当たる積極展開で成果を生み始めている。利益を地域に再投資して経済の循環につなげる意欲的な挑戦は、地域活性化のモデルになる。 旧町観光物産協会は任意団体として長年、町長が会長を務めてきた。観光キャンペーンを繰り広げ、首都圏などでの物産展に参加し、産業祭などの催事も開くなどして関連産業の振興に努めた。消費者、旅行者の嗜好が多様化する中、それぞれのニーズを捉え、収益性を一層重視した組織を目指そうと法人化を決め、理事長に民間人を迎えた。特産品や旅行商品の開発は年々、地域間競争が激しさを増している。時代の動向に敏感に反応した組織改革は、他の市町村の先例となるだろう。 6次化を含め、農産物などを活用した地域の特産品開発は商品完成まではたどり着くが、流通ルートに乗る例は極めて少ないと指摘されている。販路確保が大きな壁として立ちはだかる中、サクライズは、国の地方創生人材支援制度を活用して大手飲料メーカーの営業職経験者を常任理事に据え、町外に販売先を広げている。
4月に本格的に活動を開始して以降、常任理事の人脈を通じて町内の菓子店の商品がJR東京駅構内や東京都内のスーパーで販売されるようになった。町内産の蜂蜜と牛肉ローストビーフをJR東海のオンラインショップで取り扱う橋渡しも担った。JR東日本の関連会社から、県産米の食べ比べセットの企画開発を請け負い、先月、JR福島駅などでの販売が始まった。 町内のラーメン店とお土産品を共同開発するなど、物産の掘り起こしと商品化の支援を続けており、今後は観光資源の発掘にも努める。ただ、法人の安定的な運営に向けては財務面を含めた経営基盤強化が課題という。 今回の政府補正予算の編成過程では、歳出項目を巡り「ばらまき」の批判もあった。今後は地方創生の観点を一層重視し、地域独自の産業再生を後押ししてほしい。個性あふれる豊かな国土形成の礎にもなる。(菅野龍太)