長塚京三12年ぶりの主演作 筒井康隆の小説を『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の吉田大八監督が映画化 映画『敵』
筒井康隆の同名小説を『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の監督・吉田大八が映画化、12年ぶりの映画主演になる長塚京三が参加した新作映画『敵』が、25年1月に公開されることが発表された。 渡辺儀助77歳。元大学教授で今はリタイアし、妻に先立たれている彼は、朝起きる時間、食事、衣類、使う文房具一つに至るまでを丹念に扱い、預貯金の残高と生活費があと何年持つかを計算し、自分の寿命を知る。一見自己管理を徹底した生活を送っているように見えるが、時には晩酌を楽しみ、昔の教え子・鷹司靖子に淡い恋愛感情を抱くような、格好の悪い人間らしさもある。だが、そんな穏やかな老後を過ごす儀助の元にある日「敵」が現れる。 原作の筒井康隆は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。」と自身の新境地を見せる。 主演には、1974年にフランスで俳優デビューしてから50年、数々の日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。2013年公開の『ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~』以来、12年ぶりの主演映画となる本作で長塚は、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚で妖艶な魅力をもつ大学の教え子を演じるのは瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすか。バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生役には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩らが脇を固める。
長塚京三・瀧内公美・黒沢あすか・河合優実 コメント(全文)
▼長塚京三 タイトルは、原作である筒井康隆先生の小説の表題を戴くと聞きました。吉田監督のシナリオは、概ね原作に準じるものだとも。両者とも大変興味深く読ませて戴いて、なんだろうこの主人公は、ほぼ監督そのままじゃないか、と思えてなりませんでした。ご自分でおやりになればいいのに、とさえ。難はただ一つ、「ちょっとばかり歳が足りないか!」。まだやり直しのきく年齢での「絶望」は、全き絶望とはいえませんからね。 冗談はさて置き、老耄に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか掌を反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢でもあったろう主人公の嘗てのあしらいに、幾星霜かを経て、なお復讐するかのようだ。 「この逆境、老残零落のシラノ(ド・ベルジュラック)だったらどうするだろう?」などと考えてみたら面白そうである。僕の最後の、いや最後から二番目あたりの映画として受けさせて戴きます。かなりの強行軍は承知ですが、共演者、スタッフの皆さんが、最後まで味方でいてくれることを信じて。「てき」、いいタイトルです。 ▼瀧内公美 いつかご一緒させてもらいたいと願っていた吉田大八組。大八さんの現場はとても不思議な空気感で、どの表現が良いのだろうかと試行錯誤しながら撮影を進めていましたが、なんだかほっこりしていてとても居心地が良い現場でした。 そして、長塚京三さんとの共演は言葉では言い尽くせないほど京三さんに魅了され、クランクアップの前日、明日でしばらくはお会いできないのかと思うとお風呂の中で涙が出たほどです。とても不思議な面白い作品に仕上がっていると思います。わたしも今から「吉田大八ワールド」が楽しみです。 ▼黒沢あすか 台本を手にしたとき、長塚さん演じる儀助との浴室シーンに、年齢を重ねてきたからこそ醸し出せる味わい深さを大切にしたいと思いました。大八監督が長年温めてきた、筒井康隆さん原作の「敵」。その映画化にあたり監督が手掛けた台本は、世間擦れしていない儀助の品性とノスタルジックな雰囲気が絶妙に融合し、夢か幻か、あるいはSFかと思わせる独特の世界観を感じました。出演者としてその一端を担えたことを光栄に思います。 ▼河合優実 菅井歩美を演じました、河合優実です。初めてご一緒させていただいた吉田大八監督の、この『敵』という作品への思い入れにまず刺激を受けたことを思い出します。このような作り手の熱がたしかにこもった映画に力を添えられるのはとても嬉しいことです。 短い時間ではありましたが、おそらくどの時代に読んでもどうにも魅惑的なこの物語のもと、未知なるものに顔を合わせ、考えてみる機会をもらいました。 ぜひ劇場で出会ってほしいです 映画『敵』は、2025年1月17日(金)より全国公開。
otocoto編集部