プロレス・野宿…面白ければやってみる! 独自のフェアやイベント開催:東京・中井 伊野尾書店
東京都新宿区の中井駅周辺は、新宿や中野に近いながらも、商店街や住宅街が広がる下町風情のあるエリア。伊野尾書店は、1957年に創業し、現在は中井駅近辺で唯一の書店となった。17坪の店内には雑誌や書籍、コミックなどの新刊が揃い、文芸書や児童書などもしっかりカバー。プロレス関連の書籍が多めなのは、2代目店長・伊野尾宏之さんの趣味によるもの。“街の本屋”の役割を果たしつつ、独自のフェアやイベントなどを行い、SNSで発信することで、未知の本との出合いの場を提供している。 【写真】伊野尾書店では、書籍や文庫本にカバーを掛ける時、ハサミを使って本の間に織り込む昔ながらの方法をとっている
父の代から60年以上続く“街の本屋”
都営地下鉄大江戸線中井駅A2出口を出て、右側に顔を向けると、赤い文字の「本」という看板が目に飛び込んでくる。この伊野尾書店があるのは、大江戸線中井駅と西武新宿線中井駅を結ぶ駅前商店街で、両駅の乗り換え客はもちろん、地域に暮らす老若男女が行き交う、人通りの多い場所だ。伊野尾書店の2代目店長である伊野尾宏之さんの父が、1957年に店を開いたのがはじまりで、当時は長屋のような建物に花屋や薬屋が並び、伊野尾書店もその一つだったという。 「昭和30年代当時の様子はわかりませんが、少し歩くと畑があり、すごく田舎っぽかったと聞いています。私もここで生まれ育ちました。店の奥に住居スペースがあって、仕事も家のことも全部一緒、という感じ。店の広さは今とあまり変わっていません」 そう語る伊野尾さんは、親から店を継いでほしいと言われたことはなく、自分もそのつもりはなかったという。大学卒業後、歌舞伎町のゲームセンターでアルバイトをしていたある日、父がバイクで配達中に転倒し、ケガをしてしまう。そこで、伊野尾さんが店を手伝うことになった。24歳の時のことだった。 「ゲームセンターのアルバイトをこのままずっとやっていくのかと行き詰まりを感じていた時に、臨時で本屋の仕事を手伝うことになりました。働いているうちに、本屋のオヤジとして生きていく人生もあるのかも、と思ったんです」