海外大物ミュージシャンの“親日伝説” ブルーノ・マーズ「ドンキ」CMに連なる「日本にハマる」パターンとは
メイドインジャパン楽器の力
こうしたことに加えて、忘れてはならないのが日本製楽器の持つ力だろう。 日本製の楽器を気に入り、楽器メーカーを気に入り、日本に愛着を持つアーティストも多いのだ。ミュージシャンは、状態のいい楽器を提供されることはものすごく重要。自分の作品のクオリティにかかわるし、ひいては人生にも影響する。 スティングは、今はフェンダーのジャズベースで演奏しているが、一時期は日本のアイバニーズで演奏していた。アイバニーズは星野楽器(本社・愛知県)のブランドだ。 パット・メセニー、ジョージ・ベンソン、キッスのポール・スタンレーもアイバニーズのギターを弾いている。星野楽器は彼らのリクエストに細かく対応し、演奏する音楽に適したオリジナルのギターを提供し続けている。 アイバニーズGB10というギターを使っている時期のベンソンをインタビューしたことがある。“GB”はもちろん、ジョージ・ベンソンのイニシャルだ。 「GB10は私のてのひらにぴったりと収まるギター。ボディも理想のサイズ。ステージで落としてしまってもチューニングの必要がないほどタフ。音は豊かで、私は演奏だけに集中できる」 そう自慢気に話していた。
日本ブランドはアフターケアも充実
チック・コリアが60歳のとき、ニューヨークのジャズ・クラブ、ブルーノートで3週間のお祝い公演があった。その現地でのインタビューでは、静岡県に本社があるヤマハのキーボードに囲まれていた。シンセサイザーのS80とMOTIF8、そしてアコースティック・ピアノだ。 「僕がメロディをつくって演奏すると、楽器が読み取り、まったく同じ演奏を再現してくれます。かなり難しい演奏でも僕に聴かせてくれる。まるでチック・コリアが2人いるみたいにね」 そう言ってシンセで実演してくれた。ミュージシャンたちは、来日すると自分が信頼する楽器メーカーを訪れる。そこで、自分仕様の楽器をリクエストし、新しいモデルも試している。 日本製のドラムスも質が高い。世界中のドラマーが憧れた腕利きたちが演奏してきた。スティーヴ・ガッドはヤマハ、TOTOのリーダーだったジェフ・ポーカロはパール楽器、エルヴィン・ジョーンズはタマ(星野楽器)を愛用していた。 評価が高いのは品質プラスサービスだ。 日本のブランドは楽器を売るだけではなく、その後もきめ細かくケアする。作品やミュージシャンへのリスペクトがあるからこその、ビジネスを超えたフォローが行われている。その積み重ねによってアーティストたちは日本や日本人に対する信頼を深め、信頼関係が築かれてきた。