北朝鮮が「地雷」を埋めた韓国へと続く道路…かつて私が、この道を撮影しながら軍事境界線まで行ってしまった“事件”とは
次々と実行された「韓国排除」
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、韓国との交流の痕跡を次々と抹消している。 近いところでは、4年前の2020年6月16日、「南北共同連絡事務所」と「開城(ケソン)工業団地総合支援センター」を派手に爆破した。 【写真】こんな北朝鮮、見たことない…!写真家が29年撮り続けた“未知の国”の日常 また昨年11月には、韓国との軍事的緊張の緩和のため2018年に締結した「9.19南北軍事合意」を破棄。この合意に基づいて非武装地帯(DMZ)内の監視哨所を撤去していたが、それを再建している。 そして今月10日には、景勝地の金剛山(クムガンサン)に韓国が建設した消防署が撤去されていることを韓国政府が明らかにした。 さらに最近になって、新たな措置を行なっていることが判明した。 南北間には、非武装地帯とその中央部の軍事境界線を横切る3本の道路がある。開城工業団地や金剛山との行き来や、朝鮮戦争での戦死者の遺骨収容を目的として建設された。これらは南北間を人と物が行き来する動脈であり、南北和解と交流の象徴だった。ところがその道路で、照明灯の撤去に続き地雷の埋設まで行なわれたことが4月末に分かった。 2023年12月26~30日に開かれた「朝鮮労働党中央委員会総会」で金正恩(キム・ジョンウン)党総書記が、韓国との関係を「もはや同族ではなく、敵対的で交戦中の二つの国家関係」と定義。金総書記は、今年1月15日の「最高人民会議」でその理由を次のように説明した。 「苦い北南関係史が与える最終結論は『政権崩壊』と『吸収統一』を夢見ながらわが共和国との全面対決を国策としており、日増しに道理に外れて凶悪になり、傲慢無礼になる対決ヒステリーによって同族意識が骨抜きになった大韓民国の連中とは民族中興の道、統一の道を共に歩めないということである」 つまり、長年にわたって韓国が行なってきた“太陽政策”などの統一政策は欺瞞であり、もはや統一国家を目指さないというのだ。そして、具体的な措置に言及している。 「北南交流協力の象徴として存在していた京義(キョンギ)線のわが方の区間を回復不可の水準に物理的に完全に断ち切ることをはじめ、境界地域の全ての北南連携条件を徹底的に分離させるための段階別措置を厳格に実施しなければならない。 そして、首都平壌(ピョンヤン)の南の関門にぶざまに立っている『祖国統一3大憲章記念塔』を撤去するなど、この他の対策も実行することによって、わが共和国の民族史で『統一』『和解』『同族』という概念自体を完全に除去しなければならない」 私はこの「祖国統一3大憲章記念塔」を、何度も取材したことがある。そして地雷が埋設されたという道路で以前、撮影厳禁を知らずにビデオ撮影しただけでなく、間違って軍事境界線を越えて韓国へ行きそうになったことがある。