選挙予測報道は選挙結果に影響するのか? ── 国立情報学研究所准教授・小林哲郎
2014年の今回の総選挙では多少の議席減を予測する報道が多いものの、おおむね自民党の「一強体制」は維持されるとの報道が多いようです。このような選挙予測報道は時に有権者の投票行動をゆがめるものとして、政治家や政党が規制を求めることがあります。選挙予測報道は本当に選挙結果に影響を及ぼすのでしょうか?
選挙報道が選挙結果に及ぼす効果は、アナウンスメント効果と呼ばれています。アナウンスメント効果には、選挙に勝ちそうだと報道された候補者に票が集まるバンドワゴン(勝ち馬)効果と、負けそうだと報道された候補者に票が集まるアンダードッグ(負け犬)効果の2種類があります。 アメリカ大統領選挙では各州で予備選挙が行われますが、各候補者は当選確率の期待をできるだけ低くするように腐心しているといわれています。これは、アイオワ州やニューハンプシャー州など早期に予備選挙を行う州で低い下馬評をくつがえす「サプライズ」を演じることで、その後の選挙におけるバンドワゴン効果を得ることができると考えられているからです。したがって、下馬評が高いと「サプライズ」を演じることが難しくなるため、選挙予測報道で優勢が報じられた候補者はなるべくメディアに露出しない戦略を取るといわれています。
日本では、中選挙区制の下での選挙調査の分析から、候補者によっては選挙予測報道と投票行動に関連が見られるものの、全体としてみるとバンドワゴン効果とアンダードッグ効果が相殺されるため、選挙結果に影響しないという研究結果が得られています(*1)。 また、中選挙区制の下では同じ選挙区で立候補している複数の自民党候補者の中でバンドワゴン効果とアンダードッグ効果が生じて相殺されるので、最終的な選挙結果を大きく左右するほどの効果は見られなかったという研究結果もあります(*2)。ただし、こうした状況は小選挙区制の下では変化している可能性もあるため、今後の新しい研究が期待されます。