選挙予測報道は選挙結果に影響するのか? ── 国立情報学研究所准教授・小林哲郎
選挙予測報道が有権者の投票行動に直接影響しなくても、寄付金の額や選挙運動員の士気などに影響する可能性があります。実際、選挙が接戦であると報道された場合に、運動員の士気やカンパの意図が高まることをフィールドワークから見出した研究があります(*3)。 さらに、そもそも選挙予測報道を見て投票行動を変更することに問題があるのかという論点もあります。選挙予測報道でリードしているとされた候補者は、それだけ多くの人に支持されているということです。「多くの人が支持しているのであるから良い候補者なのだろう」と考えることが必ずしも間違いとは限りません。いわば、選挙予測報道の数字は集合知としての手がかりを提供してくれているのです。 選挙予測報道が寄付金の額や選挙運動員の士気などに影響することも、有権者が合理的な判断をしている可能性を示しています。接戦であれば、自分が寄付をしたりボランティアで選挙運動を手伝ったりすることの意味は大きくなるでしょう。選挙予測報道が資金や票を有効活用するための判断材料として有権者に使われているのであれば、アナウンスメント効果を恐れて選挙予測報道を問題視したり規制しようとしたりすることはおかしいということができるでしょう。 ------ *1 池田謙一 (1988). 選挙報道はアナウンスメント効果をもちうるか. 新聞研究, 66-73. *2 小林良彰 (1990). マスメディアと政治意識. レヴァイアサン, 7, 97-114. *3 亀ヶ谷雅彦 (1998). アナウンスメント効果の「間接効果」の実証に関する試み. 選挙研究, 13, 110-119.