明日菜子の「2024年 年間ベストドラマTOP10」 NHKの強さ、ドラマに込められた未来への祈り
『Eye Love You』のおかげで毎週火曜日が待ち遠しかったのを覚えている。ネガティブな要素を背負わされがちな30代女性が、ただ真っすぐに恋をする物語に心躍った。チェ・ジョンヒョプと中川大志が演じた“相手の意志を尊重する”男性キャラクターの描き方も令和らしさがあった。 『全領域異常解決室』の驚くべき点は、今作が毎年コンスタントに作品を送り出す脚本家・黒岩勉のオリジナル作であること。その圧倒的なストーリーテリングは、年々加速するネット考察文化に対して、挑戦状を突きつけたようにも感じた。 実写化を待ち望んだ『Shrink―精神科医ヨワイ―』は、期待を上回る素晴らしさ。毎年あらゆるドラマが作られる中、視聴者が受け取った後のことまで考え抜かれた作品は、そう多くない。中村倫也や土屋太鳳ら、作り手たちの誠実さを感じるドラマ化になっていた。 今年のドラマを振り返ってみると、闇バイトやトーヨコ問題など、あらゆる角度から日本の貧しさを突いた作品が増えた気がする。『虎に翼』を眺めていても、寅子たちの時代からまったく進歩していない現実にため息が出ることもあった。 しかし、ドラマは絶望だけを描いているわけではない。最悪な選択を繰り返した主人公がやっと踏みとどまれた『3000万』のラストには、わずかな希望が感じられた。『虎に翼』は、私たちには「はて?」と言う権利があることを教えてくれた。2024年のままならない現状を映し出す一方で、ドラマには未来への祈りが込められていると思う。 どうかその祈りが届く2025年になりますように。そして、来年も素晴らしいドラマに出会えることを願っている。
明日菜子