【第2回】サイトウサトシのタイヤノハナシ:スタッドレスタイヤはなぜ効く?
素材とデザインの相乗効果が生む氷雪路性能
サマータイヤのコンパウンドでスタッドレスタイヤ(当時の現行型)のトレッドパターンにしたものと、スタッドレスタイヤのコンパウンドでサマータイヤ(≒スタンダードタイヤ)のトレッドパターンにしたものを走り比べたことがありました。 サマーコンパウンド+スタッドレスパターンは、スタッドレスタイヤには及ばないにしても、雪上ではステアリングが効き、それなりに走ります。これはトレッドパターンの理屈からいっても納得。ですが氷上でも、グリップが心もとないとはいえ、意外に前へ進むし、ステアリングも効くのには驚かされました。 これはブロックのエッジや、サイプと呼ばれるトレッド面の細かい溝が作り出す引っ掻き性能が出ているからなんです。またブロック自体も、サイプによって細かく刻むことで剛性を落として変形を促し、エッジを効かせてグリップを発生しやすくしています。トレッドパターンの重要性がよくわかる実験でした。 一方、スタッドレスコンパウンド+サマータイヤパターンでは、グリップはそれなりにするのですが、滑り出しが唐突で、運転しにくかったのが印象的でした。また、ステアリングも手応えが薄く、走りにくいものでした。 サイプが施されておらず、ブロック剛性が高いことが、唐突な滑り出しや効きの悪いステアリングの要因だと思われます。また、ショルダーブロックがラウンド形状の高剛性なデザインになっているのも、踏ん張りの効かない旋回性能につながっているのでしょう。 コンパウンドの柔軟性や吸水性能が優れていても、サイプやブロックのエッジ成分が少なく、またブロック剛性が(スタッドレスタイヤには)高すぎれば、スタッドレスコンパウンドの性能を引き出しきれないということを実感しました。 このことから判るように、スタッドレスタイヤはソフトなコンパウンドだけでなく、その能力をより引き出すため、トレッドパターンやタイヤの形状にまでさまざまな工夫が凝らされ、グリップ性能や操縦性が作られています。ですから、とってもタイヤに興味のあるサイトウは、最新のスタッドレスタイヤのトレッドパターンを見ているだけで、ご飯3杯くらいイケてしまうのです。
斎藤 聡(執筆/撮影)