「頑張らなくてもいいから生きて」 飲酒運転で息子を亡くした母が子どもたちに送るメッセージ
シンガーソングライターの川嶋あいさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『明日への扉~いのちのラジオ+~』(ラジオ関西、毎月第1・2週日曜午後5時~)。8月11日の放送では、NPO法人「はぁとスペース」理事長の山本美也子さんがゲスト出演。自身の経験や、同法人の活動内容について語った。 【関連】「死ななくて本当によかった」 朝ドラ『あさが来た』著者・古川智映子が振り返る波乱の人生 看護師として働きながら、2010年にNPO法人「はぁとスペース」を設立し、障がい者も健常者も仲良く暮らせる社会づくりを目指して活動中。2011年より「飲酒運転撲滅」をテーマに命の大切さを訴え、全国で講演活動を行っている。 もともと、NPO法人「はぁとスペース」を立ち上げたのは、「なにかボランティアができないかな」という思いがきっかけだった。 活動を開始してから約1年後、長男を飲酒運転の事故により奪われることに。「経験したことのないような深い深い悲しみを経験した」と胸中を漏らし、「『こんなに泣いても人って死なないんだな』と思うほどに泣いた」と当時を振り返った。 被害者遺族になって初めて、加害者側の苦労にも気づいたという山本さん。さまざまな活動を通して、加害者家族も大変な思いをしていることを知ったことから、「思いやりで社会を変えていきたい」という思いが芽生えたという。 飲酒運転撲滅運動の一環として作成したステッカーには、バツマークではなく、ハートマークを採用。その真意について、山本さんはこのように語った。 「飲酒運転は、捕まるからダメ・罰金があるからダメなのではなく、本来は飲酒運転ゼロなのが当たり前。そもそもしてはいけないことであることがいろいろな人に伝われば、もっともっと安全な社会になるんじゃないかな」(山本さん) 飲酒運転撲滅運動を開始した当初、チラシを目の前で破られたことや、「飲酒運転は車とお酒がある限りなくならないから、活動はやめたほうがいい」と声をかけられたこともあった。しかし、「大人はすぐには変わらないけど、子どもたちに講演活動をしてみよう」と発想を転換。近くの小中学校から講演をスタートさせた。 活動開始から13年。講演を受けた子どもたちが社会で活躍するようになり、なかには、企業の研修会で再会することや、警察官になった子も。山本さんは、「話をしてきた若い人たちが社会を変えるために動き出した、という場面を目にするとうれしく思います」と笑顔をこぼした。 深い悲しみやつらい経験を乗り越え、長年にわたって続けてきた講演活動が実を結んだ形で、2020(令和2)年、福岡県では「すべての県民が飲酒運転を見かける等した場合の110番通報等」が義務化されたという。 近年、夏休み終盤となる8月後半から9月にかけての2学期が始まるタイミングで、「学校に行きたくない」と悩む子どもたちが増えることが社会問題になっている。そんな子どもたちや家族に向けて、山本さんはこのようにメッセージを送った。 「私は息子を亡くしたのですが、彼らから教えてもらったことがあるとすれば、『明日は当たり前にくるわけではない』ということ。いまこの瞬間に生きていることが、奇跡のような素敵な時間。一生懸命生きなくても、がんばらなくてもいいから、生きてほしいと思います」(山本さん) ※ラジオ関西『明日への扉~いのちのラジオ+~』2024年8月11日放送回より
ラジオ関西