「甲子園は5大会あっていい」プロホッケーコーチが指摘する育成界の課題。スポーツ文化発展に不可欠な競技構造改革
プログラム化が苦手な日本。「まずすべきこと」とは?
――アメリカのアイスホッケーの現場だと、大会の形式はどのようになっているのですか? 若林:中学高校年代の全国大会だけでもレベル別、年齢別で10個以上あります。また、どんな小規模な大会でも、必ず予選リーグと決勝トーナメントがあり、試合数が保証されています。 ――大会の数だけ優勝チームが生まれて、より多くの子どもたちが成功体験を得られるわけですね。 若林:そうです。全国大会までいかなくても、地元の大会や、アイスホッケーのリンク内だけで優勝を決めるハウスリーグという大会があって、子どもたちも親もすごく盛り上がりますよ。誰もがプロを目指しているわけじゃないわけですから、それでいいと思うんです。レクリエーションも一つのスポーツのあり方として考えて構造を変えていかないと、あらゆる競技の継続率は上がらないと思います。 ――女子選手は特に、競技人口が減ってしまう理由として、レベルや地域別で受け皿となるチーム数の少なさが指摘されます。原因がわかればチーム数も増やせるのでしょうか。 若林:できると思います。どの競技でもまずやらなければいけないのは、継続率を調査して、どの年代で継続するためのギャップが生まれているか、またその原因を突き止めることです。例えば強豪チームには部員がたくさんいて、出られない選手のほうが多いじゃないですか。そこをうまく部員数が少ないチームにレンタルしたりして実力が似たチーム数を増やしてリーグ戦化を進めれば、より良い状況が生み出されると思います。レンタル制度はすでに青森県のアイスホッケーU-15リーグでかなり前から導入されてます。 こういう話を競技関係者の方にすると、「日本ではリーグ戦の試合数はこなせない」と言われることがあるのですが、現場の方の話を聞くと、例えば高校のアイスホッケー部や野球部はリーグ戦ができるぐらいの練習試合をこなしているんですよ。練習試合でも、レフェリーをつけてスコアシートも出ている。その競技資源をリーグ戦に費やせたら理想的ですよね。もちろん、すべてを海外のような環境にするのは不可能ですし、それが最善でもありません。でも、日本の特性を生かし、競技資源を最適化してより良い競技構造を作る余地はまだまだあると思います。 ――解決の糸口は見えているのですね。 若林:日本では問題がわかっていても解決することにはあまりエネルギーを使わず、「イロイロあって難しい。こういうものだから」と諦めてしまうことが多いように思います。競技関係者はみんな、問題点はいくらでも出してくれるのですが、それを解決するための道筋を立てるプログラム化が苦手なんですよね。 ――プログラム化するために、まずすべきことは何でしょうか。 若林:まずは問題を解決するために、現状を調査し、問題解決のための達成度を数値化して達成期限のあるプロジェクトにすることです。次に、それを実現するために日常的なプログラムに落とし込み、その結果を評価する。勝てる組織(チーム)は伝統的にこの構造化がしっかりしていて、リーダーはその運用がうまいということです。 <了>