センバツ高校野球 久我山初の8強 得点重ね、継投でしのぐ /東京
第94回選抜高校野球大会第7日の25日、2回戦に臨んだ国学院久我山(杉並区)は高知に勝ち、目標でもあった春夏初のベスト8進出を決めた。初回に4番下川辺のスクイズなどで2点を先制。3番木津の適時三塁打や8番松本と9番萩野の適時打などで計6点を挙げた。投げては甲子園初マウンドの先発・渡辺と2番手・松本の両左腕が再三のピンチも粘り強い投球でしのぎ、逃げ切った。久我山は準々決勝(大会第9日第3試合)で、星稜(石川)―大垣日大(岐阜)の勝者と戦う。【小林遥、隈元悠太】 最終の九回。犠飛で1点を返され、さらに2死一、二塁のピンチで相手の4番打者を迎えた。本塁打が出れば同点に追いつかれる場面。応援団や観客が固唾(かたず)をのんで見守る中、二番手の松本が投げ込んだボールは内野に高く上がるフライになった。捕手吉川が大事にキャッチした瞬間、スタンドから拍手が鳴り響き、選手に笑顔がはじけた。 久我山は序盤からたたみかけた。一回、1死二、三塁で4番下川辺の意表を突くセーフティーバントで先制。母美美(よしみ)さん(46)は「点が取れて良かったの一言に尽きます」と安心した様子だった。先発の渡辺も3者凡退に抑える好投を見せた。母育代さん(53)は「(渡辺の)小さいころからの憧れの場所なので、今までやってきたことを発揮してほしい」と姿を見守った。 三回に1点返されたが、五回に2番上田の犠打、さらに3番木津の適時三塁打で追加点を挙げた。五回から松本が継投し3者凡退の活躍を見せると、息子の雄姿を見るため駐在中の台湾から一時帰国した父敦郎さん(56)は「(緊張して)見ていられない」と言いながらも、「(松本は)テンポ良く投げるタイプなので、リズムを変える役割をしっかり果たしている。誇らしい」と話した。 久我山のチャンス時に流れる曲「一本」が何度も流れ、スタンドの観客も高揚していた。勢いは止まらず、八回には8番松本、9番萩野の連続適時打で2点を追加した。 手にした初の8強に、スタンドの応援団も沸いた。野球部OBで同校野球部の学生コーチの長友大知(たいち)さん(21)は「いい試合展開だった。選手たちが生き生きプレーしていたのがうれしかった」と後輩の健闘をたたえた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇4番の期待に応え 国学院久我山・下川辺隼人遊撃手(3年) 一回1死二、三塁で打席に立った。尾崎監督のサインはスクイズ。きっちり決めると相手の守備の乱れもあって走者2人が還り、試合の流れを引き寄せた。「とにかく先制点を取りたかったので、もぎ取りにいった」と話す尾崎監督の期待に応え、4番打者の役割を果たした。 センバツ出場が決まり、この冬は打撃強化のため体作りに力を入れてきた。母美美(よしみ)さん(46)によると、キノコ類など苦手な物も食べるようになり、寝る前に体重が減っていたら牛乳やご飯を食べることもあったという。 努力が実を結び、今大会で公式戦では初めて4番を任せられた。「打点を稼ぐのが仕事」と言い切る。初戦は打点を挙げられずに悔しい思いが募ったが、この試合では1打点で勝利に貢献するプレーができた。初のベスト8を決め、「全員野球で勝ちに行く試合を体現できた」と語る。主軸として新しい歴史を作っているチームを引っ張っていくつもりだ。【小林遥、中田博維、熊谷佐和子】 ……………………………………………………………………………………………………… ◇別学の女子も応援 ○…男女別学が伝統の国学院久我山の三塁側アルプス席には、普段は男子生徒と別に学ぶ女子生徒10人が、そろいの黒いパーカーを着て選手たちにエールを送った=写真。この日は午前7時に東京駅に集まり、新幹線とバスを乗り継いで甲子園を訪れた。野球が大好きだという滝沢幸乃さん(2年)は「移動が大変で疲れたけど甲子園に来たら元気が出てきた」と笑顔。「同級生が夢の舞台で頑張っているのを見ると私も頑張らなければと思う」とワンプレーごとに拍手をして選手たちを応援した。 〔多摩版〕