対馬・壱岐を壊滅状態にした異賊「刀伊」を、なぜ『光る君へ』で竜星涼さん演じる隆家が迎撃したのか?ロバート秋山さん演じる実資との交流から読み解く
◆盤石の体制にあったはずの道長時代だったが こうした世情不安を重く受けとめた実資はすみやかな対策を主張、道長以下の公卿と協議し、検非違使(京の治安維持を担った役職)による夜間巡回の対策も講ぜられた。 刀伊来襲はそんな状況でのことである。4月25日「刀伊国ノモノ五十余艘、対馬島ニ来着、殺人・放火」との報が実資のもとに伝えられる。 刀伊襲来の時節、実資63歳、道長54歳、そして隆家41歳のそれぞれは、時を共有しつつも異なる環境に身を置いていた。実資そして道長は持病をかかえつつも、儀式・政務をこなし、放火・盗賊の治安の悪化への対応に迫られていた。 九州にあっては隆家が予期せぬ不測の事態への対応を迫られていた。11世紀前半の外交の危機は、盤石の体制にあったはずの道長時代に不安を招くことになる。 *本稿は、『刀伊の入寇-平安時代、最大の対外危機』の一部を再編集したものです。
関幸彦
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