WeWork創業者の「謎の不動産プロジェクト」がサウジに進出
アダム・ニューマンの不動産スタートアップFlow(フロー)が、サウジアラビアの首都リヤドで、同国で初の物件をひっそりとオープンした。Flowのプロジェクトは、ニューマンがWeWork(ウィーワーク)のCEOを追放された後に中止された不動産プロジェクトのWeLive(ウィーリブ)に続く、不動産とコリビング(共同生活)分野での新たな挑戦だ。 ニューマンは、テネシー州やジョージア州、フロリダ州などの米国のサンベルト地帯に10億ドル(約1436億円)以上のアパート物件を購入した後の2022年8月に、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)から3億5000万ドル(約350億円)を調達し、Flowの物件をコワーキングスペースやヨガクラスなどを取り入れた独自のコミュニティにしようとしている。 同社が8月にリヤドの空港近くのアン・ナージス地区に開設したFlow Narjis(フロー・ナージス)は、月額3500ドル(約50万円)からの家具付きアパートを、ハウスキーピング付きで提供する「コンシャスなコミュニティ」で、プールやジム、ボウリング場などの設備をパッケージ化している。 8月に最初の入居者の1人が撮影したYouTube動画には、まだ建設途中のほとんど人がいない建物が映っている。238戸のアパートを備えたこの複合施設の内装は、WeWork風のボヘミアンシックな美学を追求している。 Flowは、リヤドで合計約1000部屋を持つ3つの物件を年内に完成させようとしている。同社は、地元の民間投資家とのパートナーシップでこれらの物件を購入しており、a16zを支援するサウジの政府系ファンドは、同社に投資していないとFlowの広報担当者のエイミー・スティーブンスは語った。 a16zは、悪名高いウィーワークが崩壊した後、ニューマンのFlowへの投資を行った。ニューマンは昨年末から、経営再建中のウィーワークを安値で買い戻そうとしていたが、その試みは頓挫した。Flowがウィーワークを6億5000万ドル(約933億円)で買収するという彼の提案は拒否され、不動産ソフトウェアグループのYardi(ヤルディ)が、ウィーワークの債権者との取引の後、同社を4億5000万ドル(約646億円)で買収した。 ■支離滅裂なコンセプト ニューマンが最初にFlowの立ち上げを発表したときに、同社のビジネスモデルは謎めいていた。同社の求人広告では「未来の暮らしに対する野心的なビジョン」が謳われており、ニューマンは「暗号化された金融サービス」や「賃貸料で入居者がエクイティを構築する」などという、多岐にわたる曖昧な計画を散りばめていた。 彼はまた、「入居者が自分でトイレの詰まりを解消することで、物件の所有感が味わえる」という理解し難いアイデアを提示していた。 ニューマンは、「部屋のトイレが詰まったら、業者を呼ぶのではなくて、自分でラバーカップを便器に突っ込む。これが物件を所有している感覚をもたらすんだ。そしてコミュニティの一員になれるんだ」と、a16zが昨年11月に開催した『アメリカン・ダイナミズム・サミット』で述べていた。 しかし、その一方で彼は、「フォーシーズンズホテルと同等のホスピタリティを、アパート運営に持ち込む」という計画を別のカンファレンスで述べており、話が支離滅裂だった。また、そもそも、プレミアムなサービス付きアパートは決して新しいアイデアではなく、フォーシーズンズ・レジデンスは20年以上も前から存在している。