<ボクシング>激闘王、八重樫が再起戦即3階級を狙い世界戦。「ロマゴン戦の再来を期待しないで」。
サウスポーとオーソドックスの違いはあるが、五十嵐俊幸(帝拳)からタイトルを取った試合展開が理想だろう。あの試合で八重樫は前に出て距離を潰しインサイドに入って手数で圧倒した。八重樫自身は、今回、殴り合いでお客さんを楽しませるボクシングではなく「勝ちに徹したい」ともいう。 「ファンに方々には、ロマゴン戦と比べられると思うんですが、今回は、勝ちにいくのでつまんないボクシングになると思います。(激しい殴り合いは)期待しないで下さい」 パンチ力で勝負するロマゴンと違い、ゲバラはスピードを生かすタイプで好戦的なボクサーではない。八重樫は、戦術のひとつとしてインサイドに入って潰しにいく戦術をとるだろうが、ロマゴン戦のような激しい“殴り合い決着”は考えにくい。八重樫が、「つまんないボクシングになる」と予告するのは正直な新王者となるための展開予想だろう。 実は、ゲバラは兄弟ボクサーで弟のアルベルト・ゲベラは、去年の11月にWBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)に挑戦してKO負けしている。日本人に兄弟揃って負けるわけにはいかないと、万全の準備をしてくるだろうが、八重樫の本当の敵は、むしろ、自分自身、1階級下げることで1.8キロ増えることになる減量にある。 「これまで6キロで済んだ減量が8キロになります。ミニマム時代に比べると楽に思えますが、フライに上げることで肉体を改造して筋肉で4キロほど基礎体重が増えているので、ミニマム時代のような減量をしなければなりません。でも筋肉をそぎ落とさず、うまく減量をしてフライのパワーをそのままライトフライに持ち込みたいと考えています。パワーが僕の優位な点。ゴリゴリとその部分を使っていきたい。ただ世界的に見ても逆に階級を落として狙う3階級には失敗しているボクサーが多い。何か原因があるはずなので、そこには注意したいは思っているのですが、体重はちゃんとコントロールします」 八重樫は、そう決意を語る。この2か間の調整も含め、どういうコンディションでリングに上がれるのかも勝敗を分けるポイントになりそうだ。 大橋会長は、「ライトフライが本来の適正階級だと思うし、ここで世界をとれば、今度は、スーパーフライに上げて夢の4階級制覇も見えてくる」と言った。 31歳。「僕には時間がそう残されていない」という八重樫の年末決戦。 「1年の最後をいい試合で締めくくって、3階級をとれれば達成感はあるでしょうね」 “激闘王”は、そう言って拳を突き出した。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)