更年期のつらい症状も漢方で緩和できる!【40代・50代、漢方の知識、基本のき③】
◆漢方薬は、更年期症状の中でもどんな不調に強いのだろうか? 「更年期に起きやすい不調には、下記のような症状があります。漢方薬は、これらのほとんどの症状に効果を発揮します」 1)血管の拡張と放熱に関係する症状……ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など。 2)上記以外のさまざまな身体症状……めまい、動悸、胸が締めつけられるような感じ、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさなど。 3)精神症状……気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠など。
更年期症状によく用いられるのは、「婦人科3大処方」と呼ばれる3つの漢方薬が代表的です
では、具体的にはどんな漢方薬が用いられるのだろうか? また、市販の漢方薬を自分で選ぶ場合のポイントとは? 「漢方薬は、いくつかの生薬が組み合わさって作られています。ひとつの生薬に、少なくともひとつは薬理作用があるので、複数の生薬を組み合わせる漢方薬には、いくつもの症状を改善する作用があります。 そのため、自分で市販の漢方薬を選ぶときは、どれもこれも自分の症状に当てはまるように思われて、なかなか難しいと思いますが、とりあえず、更年期症状には、婦人科3大処方といわれる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)から選んでみるとよいでしょう。 当帰芍薬散は、“血と水”の異常がある場合に用います。“血と水”に異常がある場合は、女性ホルモンの変化による症状に加えて、むくみと冷えが強く出やすいので、そのような人に向いています。 また、加味逍遙散は、“気と血”に異常がある場合に用います。“気と血”に異常があると、女性ホルモンの変化による症状に加えて、イライラ、怒りやすい、不安、落ち込みなど精神的な症状が強い場合が多いので、そうした人に向いています。 そして、桂枝茯苓丸は、“血”に異常がある場合に用います。“血”の異常があると、女性ホルモンの変化による症状に加えて、冷えのぼせ(首から上は熱く、下半身は冷える)の症状が強い場合が多いので、そうした人に向いています」 ◆更年期症状に用いられることが多い「婦人科3大処方」 ●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) むくみと冷えが強いことが選択する際のヒントになる。 更年期障害、月経不順、月経困難症、月経痛、月経前症候群、寒冷刺激で悪化する頭重感、頭痛、めまい、肩こり、貧血、倦怠感、動悸、耳鳴り、下腹部痛、腰痛、腰の冷え、四肢の冷え、皮膚にツヤがないなどの症状に。 ●加味逍遙散(かみしょうようさん) イライラ、怒りやすい、不安、落ち込みなどの精神的な症状や、肩こり、疲労などの症状があることが選択する際のヒントになる。 更年期障害、月経不順、月経困難症、月経痛、月経前症候群、頭痛、頭がふらつく、頭がボーっとする、のぼせ感、目の疲れ、四肢のしびれ、皮膚にツヤがない、動悸、眠りが浅い、食欲がない、倦怠感、むくみ、腹痛、冷え症、虚弱などの症状に。 ●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 冷えのぼせの症状がある、しっかりした体格、赤ら顔、腹部充実(お腹まわりに脂肪がついてきた、脂肪がついている)などの特徴があることが、選択する際のヒントになる。 更年期障害、月経不順、月経困難、月経痛、月経前症候群、子宮内膜炎、不正出血、痔、下腹部(特に左側)に圧痛がある、めまい、頭重感、肩こりなどの症状に。 ◆「婦人科3処方」以外で、更年期症状によく用いられる漢方薬もある 上記の3つの漢方薬以外にも、更年期症状によく用いられるものもあるとか。 「ホットフラッシュには、熱を下げる作用のある黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や、黄連解毒湯に血を補い、血を潤す効果を加えた温清飲(うんせいいん)を用いることがあります。 また、加味逍遙散は、精神的な症状の中でも特に、イライラなどの気が立っている場合に用いることが多いですが、精神的に弱くてうつうつとしている場合には、女神散(にょしんさん)を使うことがあります。 そのほか、気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠などには柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や抑肝散(よくかんさん)を用いることもあります」 ◆患者さんの状況や環境に応じて、漢方薬を選び分けることも 「その人の状況や環境に応じて漢方薬を選び分けることもあります。 私の場合は、更年期症状なら、仕事と家庭を両立している人なのか、仕事はしていないけれど、家事や子育て、介護などをしている主婦の人なのかで選び分けることが多いです。 前者の、仕事を持ち、家事に育児にと一日が24時間では足りないような人には、“血の道”を調整することに加えて、滋養強壮を目的とした“参耆剤(じんぎざい)”と呼ばれる漢方薬を用います。参耆剤には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)など10種類程度があります。 一方、専業主婦で、家事、育児、介護などで忙しくしている人には、“血の道”の調整に加え、精神安定の効果もある“気剤”の漢方薬を用いることが多いです。気剤には、前述した柴胡加竜骨牡蛎湯のほか、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などがあります」