『おむすび』ガラケーが恋のキーアイテムに 「センター問い合わせ」を繰り返した“あの頃”
好きな人とのメールのラリーが嬉しかった“あの頃”
当時はLINEのように既読機能はなく、メールの返信が来ないのはまだ相手が読んでいないだけなのか、それとも何かまずいことを送ってしまったのかという不安の中で過ごしていた人も多い。『おむすび』第31話で翔也(佐野勇斗)からのメールを待っていた結のように、何らかの事情で未受信になっていることを信じて、何度も「センター問い合わせ」にチャレンジしていた人もいるだろう。「好きな人から返信がきた!」と思いきや、友達や親からのメールだったり、あるいはチェーンメールだったりすることも。がっかりしたくなくて、人によって着信を知らせるランプの色や音楽を変えている人もいた。当時はおまじないも流行っていて、好きな人から返信がくると話題になった「5151メール」を試してみたり、恋愛成就で色によって意味が異なる「ハートの辞書」を待ち受けにしてみたり、ガールズバンド・GO!GO!7188の「こいのうた」を好きな人の着信音に設定してみたりしていた人もいるのではないだろうか。 そんな当時の私たちが何よりも嬉しかったのは、好きな人とのメールのラリーが続き、返信を意味する件名の「Re:」の文字がどんどん増えていくこと。連絡方法がメールからLINEやインスタのDMに代わった今も悩みの中身はさほど違いはないが、当時はSNSで相手の動向を知れない分、離れても繋がっているという実感を得ることがより特別だったように思う。そうやって散々悩み抜き、ようやく恋が成就したときには嬉しくて、メールアドレスに恋人の名前や記念日の日付を入れたり、電池パックの裏に一緒に撮ったプリクラを貼ったり、とことん浮かれたもの。本作はそんなあの頃の気持ちを思い出させてくれる。 第7週では結の恋が描かれるが、その中でガラケーがどのような形で作用してくるのか。平成文化史としての側面も持つ『おむすび』に引き続き注目していきたい。
苫とり子