『おむすび』ガラケーが恋のキーアイテムに 「センター問い合わせ」を繰り返した“あの頃”
平成元年に生まれたヒロイン・結(橋本環奈)の青春と成長が描かれる『おむすび』(NHK総合)。第6週まではいわば物語の序章であり、結が阪神淡路大震災をきっかけに見失った本来の自分や家族との絆を取り戻すまでが描かれた。第7週からは自分の心と向き合い始めた結が夢や恋に邁進していく。そのなかで、重要なアイテムとして登場するのが「ガラケー」だ。 【写真】嬉しそうに携帯電話を見る翔也(佐野勇斗) ガラケーとは、スマホが普及する以前に主要な連絡手段として使われていた携帯電話のこと。おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信など日本独自の進化を果たしてきたことからガラパゴス諸島の生態系になぞらえて「ガラパゴス携帯」、略して「ガラケー」と呼ばれるようになった。 特に物語が始まった平成中期は、新たな機能やサービスが続々と始まっていた頃。CD音源を携帯電話にダウンロードし、着信音に設定できるサービス「着うた」もその一つだ。2002年に「着うた」の配信サービスが開始されるまでは、「着メロ」という歌詞が入っていないインストゥルメンタルの音楽を着信音に設定することができた。博多ギャル連合「ハギャレン」のルーリーこと、瑠梨(みりちゃむ)が着信音に設定していたのは、ギャルのバイブルである浜崎あゆみの「Boys & Girls」。ラインストーンなどでデコレーションされたルーリーのガラケーから流れる和音の着信メロディに、同世代の視聴者は胸が高鳴ったのではないだろうか。 ちなみにスマホが主流になった今もダウンロードした音楽を着信音に設定することができ、「LINE MUSIC」に有料登録すれば、LINEのメッセージが届いたときに好きな音楽を鳴らすことができる。しかし、スマホにあらかじめ入っているシンプルな着信音に設定している人がほとんどだろう。今はLINEのアイコンにしても初期設定のままにしている若者が多い傾向にあるが、当時はガラケーのデコレーションにしても、着メロ・着うたにしても、若者にとっては自分の個性を表現する手段の一つだったのだ。 そして2004年には、auから1曲フルコーラスを丸ごとダウンロードできるサービス「着うたフル」が開始。ダウンロードした曲はいつでも再生することができ、携帯で音楽を聴く人が劇的に増加した。それに伴って音楽配信サービスが本格的に始まり、その代表格だったのがauの「LISMO」だ。2007年にはCMソングにYUIの「CHE.R.RY」が起用され、大ヒット。同曲はガラケー時代の恋する若者のリアルな心情を歌ったラブソングで、〈返事はすぐにしちゃダメだって/誰かに聞いたことあるけど/かけひきなんて出来ないの〉〈ほんの一行でも構わないんだ/キミからの言葉が欲しいんだ〉といった歌詞に共感が集まった。当時、中学生だった筆者はアラサーになった今も同曲を聴くだけで、好きな人からのメールを待ち侘びていたあの頃の気持ちが鮮明に蘇って胸の奥がキュンとなる。