生活保護も断られ、収入は「年金月5万円のみ」。酷暑でもエアコンつけられず…68歳で失業した非正規雇用おひとりさま老人の「酷すぎる終着点」【FPが解説】
厚生労働省によると、国民年金の平均受給額はわずか月5万5,518円です。一方で、高齢者の生活費は単身でも毎月16万円以上。まったく間に合っていません。収入は毎月ひと桁万円の国民年金のみ、そして貯金もほとんどない高齢者が生活保護を断られた場合、どうすればよいのでしょうか。今回は、田中さん(仮名)の事例とともに非正規雇用者が抱える年金問題について解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
非正規雇用の低年金は生活費に届かないが…
田中さん(仮名)は、長年、非正規雇用者として働き続けてきたものの、68歳で職を失ってしまいました。結婚はしておらず、頼れる妻や子どもはいません。 この状態で、年金のみで生活できるのでしょうか。厚生労働省によると、国民年金の「老齢基礎年金」の平均受給額は、令和3年時点で毎月わずか5万5,518円という結果です。 一方で「老齢厚生年金」を見ると、毎月の平均受給額は令和3年時点で14万7,051円です。このことから、ほとんどの高齢者は「厚生年金」をメインに生活しているといっても過言ではありません。 さらに、総務省統計局によると高齢者世帯の平均支出は男性で毎月16万5,923円 と老齢基礎年金の平均受給額よりも高額です。「この酷暑でもエアコンはつけられません」田中さんは生活をできる限り切り詰めて、平均の生活費よりも抑えていますが、それでも年金だけでは生活できません。 田中さんは非正規で働き続けてきたので厚生年金に加入しておらず、年金額が不足している事態に気づいたのです。厚生年金がない分、「じぶん年金」などの自助努力が必要でした。しかし、「非正規雇用で働いていたころの収入も少ないなか、老後の備えもするなどもともと無理な話です」と田中さんは頭を抱えます。
生活費は毎月10万円近く不足…それでも認められない生活保護
田中さんはもちろん、生活保護に頼ることも考えたのですが、何度申請してもなかなか受け入れられません。 低年金であることには間違いないのですが、田中さんが役所へ相談に行った際、職員からは「お元気そうですので、働いてみてはいかがでしょうか」と告げられました。 総務省統計局「2021年の高齢者の就業率」によると、田中さんと同じ65~69歳の就業率は50.3%と、60代後半の人の約半数が働いていることがわかります。高齢者であっても、現代では生活に困窮している場合、まずは働く、というのは当然となっているのです。