小説家デビューの岡田真理さん「やりたいことに、前のめり」 今月刊行「ぬくもりの旋律」、主人公はスポーツ紙プロ野球担当記者 ライター、脚本家、NPO活動と八面六臂
スポーツライターで脚本家の岡田真理さん(45)が、今月発売の「ぬくもりの旋律」(河出書房新社)で小説家デビューを果たした。小説刊行は「子供の頃からの夢だった」といい、「ゼロから物語を作るのは苦しみもなく、すごく楽しかった」と笑みを弾けさせた。 プロ野球を中心にスポーツライターとして取材してきた経験が、作品の設定にいかされている。主人公はスポーツ紙の中堅プロ野球担当記者で、メジャーリーグ行きを希望する担当球団の投手との関係が物語の軸の一つ。それぞれの登場人物が人生の岐路に立たされ、どのように前へ一歩踏み出すのか。その選択の過程も読みどころとなっている。 番記者と取材対象の関係を超えて、深く信頼し合う両者。岡田さん自身の感情も投影されていると明かす。「交流のある選手たちがメジャーに行ったときの『うれしいけど、少し寂しい』気持ち。吉田選手らはルーキーの頃から知っているので…」。 MLBレッドソックスの吉田正尚外野手、メッツの千賀滉大投手らとは取材対象を超えた交流がある。ライターのかたわら、2014年にNPO法人を立ち上げ、プロ野球選手の社会貢献活動をサポート。吉田による開発途上国の子供支援、千賀による児童虐待防止活動などを支えてきた。 前年の13年、国内での取材活動を一時休止して渡米。MLBから独立リーグまで本場の野球を見まくって「球団をあげて社会貢献活動に取り組んでいる。だからこそ地元に根付き、愛されている」と感じた。日本の野球界にも「慈善活動をしたいけど、方法が分からないという選手がたくさんいる」と気づき、NPO立ち上げに至った。 思い立ったら、行動に移す。スポーツ関連の仕事に奔走しながら、小説の道にも進もうとしたきっかけは「新型コロナ禍」だった。「暇になってしまったけど、前向きに過ごさないともったいない」。以前から関心があったシナリオの書き方を、通信講座などで猛勉強。2023年に民放ドラマで脚本家デビューし、関係者から「小説も書いてみたら」と薦められた。 その行動力の源流をさかのぼると、テレビドラマや外国映画を見まくっていた子供の頃に行き着く。特に小学6年のときに見たドラマ「東京ラブストーリー」(1991年)に影響を受けた。「主人公の赤名リカのように自分の意志を貫く、強い女性像にあこがれた。自分のやりたいことをやって生きるぞ、と。そこから、やりたいことに前のめりになっていった気がします」。