トヨタ・ホンダ…次世代自動車「SDV」、日本勢はどう巻き返すか
ソフト新ビジネス拡大
100年に1度の変革期にある自動車産業。競争力を高め持続的成長につなげるためには、従来の産業構造にとらわれない新しい発想や価値観が不可欠だ。自動運転やソフトウエア定義車両(SDV)などソフトの価値が拡大する中、IT企業やスタートアップといった既存の枠を超えた新しいプレーヤーとの連携がカギを握る。新たな価値や体験を提供することで車の可能性を広げ、自動車産業から「モビリティー産業」への飛躍につなげる。 【写真】ホンダが開発中の次世代EV「0〈ゼロ〉シリーズ」 「人工知能(AI)で自動車の変革に貢献できる。大手自動車メーカーと連携し自動運転の実装に取り組む」(マイクロソフトの吉見英朗プリンシパルアーキテクト)。「車は移動のためだけでない。中国の自動車メーカーなどはIT・エンターテインメント分野で勝負している。日本のエンタメが加わればさらに素晴らしい自動車が供給できる」(ドルビージャパンの大沢幸弘社長)。「SDVは社会に大きなインパクトをもたらす。ソフトが新たなビジネスを創出し移動の機会を広げる」(ホンダの波多野邦道エグゼクティブチーフエンジニア)。 2024年12月、自動車関連企業やIT企業、スタートアップの幹部・担当者らが参加する「モビリティDXプラットフォーム」の会員交流イベントが開かれ、産業の垣根を超えた活発な意見交換が行われた。主催者である経済産業省の伊藤建製造産業局自動車課モビリティDX室長は「デジタル化をいかに乗り越えるか。人材を確保し企業間を結び付ける。同プラットフォームをSDVの将来など未来を語り合う場とし政策にも反映したい」と意気込む。
人・情報集積、活発な議論
SDVはクラウドとの通信により自動車の機能を継続的に更新し、運転機能の高度化など従来の自動車にない新たな価値を実現する次世代の自動車。同プラットフォームではSDVや自動運転などのモビリティーサービス、データ利活用領域の競争力を強化するため、多様な企業や人材、情報が集積・交流する新たなコミュニティーを目指している。 イベントやワークショップを通じて人材獲得・育成を図り、企業間の情報共有や連携促進につなげる。事務局を務める自動車技術会の中畔邦雄会長(日産自動車副社長)も「DXの大波で協調領域を広げ共創することが大事。裾野を広げ議論を深めることが日本の自動車技術、自動車産業の競争力の源泉になる」と指摘する。 ソフトがもたらす自動車産業への衝撃は大きい。産業構造やバリューチェーンのあり方を変え、モビリティーを起点に多様なプレーヤーが価値を生む。ソフトの更新により常に安全で快適な運転や移動空間を実現できる。 完成車メーカーもソフト領域に注力する。トヨタ自動車は「トヨタらしいSDV」の実現に向け車載基本ソフト(OS)「アリーン」などソフト基盤の開発に注力し、AI関連の投資を拡充。「SDVの基盤づくりをさらに進めるため、インフラや生活に寄り添ったアプリケーション・サービスなど、自動車産業を超えた『戦略的パートナーシップ』の構築に取り組む」(佐藤恒治社長)方針だ。 ホンダも独自のSDVで常時得られるデータを活用し、三部敏宏社長は「あらゆるシーンで顧客一人ひとりに寄り添った商品・体験価値をよりスピーディーに提供できる」と強調する。SDVへの研究開発投資として30年までの10年間で約2兆円を投じるとともに、日産ともSDV領域で協業を進めている。