河合優実×金子大地×寛一郎にとって“いい映画”とは?『ナミビアの砂漠』インタビュー
河合優実、金子大地、寛一郎という新時代の才能が共演を果たした映画『ナミビアの砂漠』。そこには、令和を生きる20代の退屈と衝動と混沌が、27歳の気鋭・山中瑶子による嘘のない言葉で描かれている。 安易な共感を拒絶するように生きるヒロイン・カナ。その姿に、観客もまた自分の中で持て余していたやりきれなさや寂しさがかきむしられてしまう。 3人は、カナの生き方にどんなことを感じたのだろうか。そして、20代の3人が感じる“いい映画”の答えとは。 令和の映画界を牽引する河合優実、金子大地、寛一郎の撮り下ろしカット
なんてハッピーな現場なんだと思った
──本作は、5月に開催された第77回カンヌ国際映画祭に出品。山中瑶子監督が、国際映画批評家連盟賞を女性監督最年少で受賞しました。そんな山中監督と一緒に作品をつくりながらすごいなと思った瞬間を教えてください。 河合:私の撮影初日がホンダ(寛一郎)の部屋でハンバーグをこねてるシーンだったんです。それがこの映画としても最初のワンカット目だったんですけど、そのシーンが終わった途端、監督がやってきて「これは傑作になっちゃうぞ~」とおっしゃったんです。覚えてます? 寛一郎:覚えてないや。もう自分のことで頭がいっぱいだった(笑)。 河合:私も正確な言葉は覚えてないんですけど、確かそういうことをおっしゃりながら、めっちゃ爆笑されてて。なんてハッピーな現場なんだと思いました。 寛一郎:ああ、そういえば言ってた気がする。僕はとにかく脚本を読んで、この人やべえと思って。なんとも言語化しにくい関係性が脚本の中で描かれていて。しかもそれがロジカルというか、ちゃんと順序立てた脚本の書き方だったんです。だから、どんな人なんだろうと思って現場に入ったら、すごいふわふわした人で。 金子:わかる。僕もどういう人か全然わからないまま現場に行ってみたら、飄々としているというか、すごいふわふわした人でびっくりしました。 寛一郎:映画を観ていただくとわかるんですけど、いい意味で倫理観がバグってるんですよ(笑)。でも、よくわかんないとこはちゃんと道徳的だし。 河合:確かに(笑)。 寛一郎:この人の普通は僕らの普通じゃないんだなと。でもちゃんと共感できる普通もある、という感じで。そのアンバランスさが印象的でした。 金子:それでいて、見えない怖さみたいなものがあって。撮っている間は、このシーンをどう見てるんだろうみたいな緊張感がずっとありました。基本はめちゃくちゃ優しいし、リラックスして楽しめたんですけど、たまにこっちが勝手に監督は本当にこれでいいと思っているんだろうかと考えさせられるような。そういう覇気を持っている若手の監督はなかなかいないだろうと思うので、すごいです。 寛一郎:僕も初日はすごく怖かった。この作品のキャラクターは、みんな監督の分身たち。だから、正解は監督の中にあるんですよ。もちろん僕らが脚本を読んでつくってきたものも正解ではあるんだけど。監督の中にある正解とそれが完璧に合致する部分はどこだろうって探っている段階だったので、初日は。リズムも何もつかめてない状態でやっていたので、すごく怖かったですね。 金子:僕も初日はガチガチでした。僕の初日はカナがホンダの部屋から引っ越してくるシーンだったんです。 河合:あの冷蔵庫を運ぶところ? 金子:そうそう。(金子演じる)ハヤシっていう役をどう形にしていこうかなと、最初は迷いながらやってた記憶がありますね。 寛一郎:また監督が簡単にOKと言わないんです。こだわるところはちゃんとこだわる。それに対して、俳優もスタッフもここはこうしますかって自分の意見を持ち寄って話し合いながら一つのシーンを完成させていくような現場で、そういう阿吽の呼吸みたいなものはあった気がします。