健康診断は日本だけのフシギな慣習! 健診で予防できないどころか命が縮まることも
治療したら命を縮めた「フィンランド症候群」
さて、ここからが本題です。健診というのは、基準値から外れた「異常値」の人を選び出して、その人たちを医療につなげていくしくみです。それにより、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などを防いだり、改善したりすることで、脳卒中や心筋梗塞などにならないようにしようというのが建て前です。 だから、異常値と判定された人の多くは、医者から薬を飲むように言われ、食事や運動などの生活指導を受けることになるのですが、それが本当に病気の予防になるかどうか――。 実は、よくわかっていません。 メタボ健診で生活習慣病のリスクが高いと判断され、特定保健指導の対象となった人を調べた研究があります。保健指導の積極的支援を終了した人は1年間で、男性で腹囲が2.2cm、体重が1.kg、女性で腹囲が3.1cm、体重が2.2kg減少するなど、受ける前に比べて数値が改善しました。血圧や血糖値、脂質も改善していました。 しかし、いちばん重要なのは数値が改善したかではなく、脳卒中や心臓病の予防効果があったかどうかですよね。その肝心なところは、調べられていないのです。 それどころか、どこも具合が悪くないのに、健診によって問題を探し、医者があれこれと厳しく介入することで、かえって命を縮めてしまうという結果すら出ています。それは、1991年に発表されたフィンランドの比較試験で明らかになりました。 試験では、40~45歳の男性1200人を選んで600人ずつの2グループに分けました。ひとつのグループは「医療介入群」で、医者が定期的に面接して「やせなさい」「禁煙しなさい」などと生活指導をし、検査値が下がらなければ降圧剤などの薬を処方しました。もうひとつのグループは「放置群」で、生活指導も検査も行いませんでした。 常識的に考えると、健康的な生活を強いられた「医療介入群」のほうが長生きしそうです。ところが、15年間観察してみると、死亡者数が「放置群」で46人に対して、「医療介入群」では67人となり、医療が介入したほうが死亡者数が多いという結果になったのです(図)。 健診とそれに引き続く医者たちの介入が、寿命を縮めてしまっている。この試験がもたらした結果は「フィンランド症候群」と呼ばれ、行きすぎた医療の介入はかえって健康を害してしまうことを警告しています。