日本被団協ノーベル平和賞受賞の意味を世界に伝える「銅の折り鶴」 広島の高校生らがつくり方を引き継ぐ
日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)のノーベル平和賞授賞式でノーベル委員会などに寄贈する銅製の折り鶴を、広島の高校生らが手作りで完成させた。0.1mmという紙のように薄い銅の折り鶴には高校生らの平和への思いが込められている。 【画像】銅の折鶴をノーベル賞授賞式に
技術を若者に伝える
銅の折り鶴は光り輝き、紙とはまた違う趣きを醸し出す。 この銅の折り鶴は、ノーベル賞授賞式に赴く日本被団協代表委員の箕牧智之さんが、戦争の恐ろしさや平和の大切さを伝えるため、広島市立広島みらい創生高校に制作を依頼した。 折り鶴を作るのは、桑元陽さん(4年生)と白井翔希さん(3年生)。 そして作り方を教えるのは沢田和則先生。沢田先生は、かつて広島を訪れたローマ教皇にも銅製の折り鶴を贈った経験を持つ。 これまでは沢田先生が一人で折り鶴を作っていたが、今回、箕牧さんから制作依頼を受け、「平和を広げるには、自分が教員として、高校生に作り方を教えていく必要がある」と感じ、生徒たちに制作を託すことに。 厚さ0.1mmの銅板を9cm四方のサイズにして、折り目をつけて丁寧に鶴を折る。紙のような銅板は、扱いが難しい繊細な素材だ。桑元さんは、「薄いが、結構力も入れるので、ちょっと間違ったら穴が開く」と慎重に折り目を入れていた。
被爆を風化させない平和の象徴
折り鶴を世界に届ける背景には、広島が経験した原爆の記憶を世界に伝えたいという思いがある。 折り鶴がなぜ広島の平和の象徴かというと、被爆後10年で白血病を発症し12歳で亡くなった佐々木禎子さんが入院中に回復を祈り、折り鶴を千羽以上折ったことが、そのおこりだ。 平和公園に立つ「原爆の子の像」は佐々木さんをモデルにつくられ、平和を願う世界各国の人々から年間1千万羽の折り鶴が届く。 銅の折り鶴づくりは1か月に及んだ。銅板に慎重に折り目をつけ、ひとつずつ丁寧に仕上げる作業には、平和への想いが込められている。 完成した折り鶴は3羽ずつアクリルの箱に入れられ、箕牧さんに5箱手渡された。