アギーレジャパン入りへ鹿島・柴崎が持っている条件
衝撃的なシーンだった。16日の鹿島アントラーズ対ヴァンフォーレ甲府のキックオフ直後。アントラーズのDF昌子源が自陣の深い位置から前線へ送ったロングパスの処理を、ヴァンフォーレのDF佐々木翔が誤る。胸でのトラップが大きくなったところへ、アントラーズのMF土居聖真が必死に足を伸ばして絡む。センターサークルのやや前方に転がるルーズボールへ、トップスピードで走り込んできたのがアントラーズのMF柴崎岳だった。右足でボールの位置を整え、間髪入れずに右足を振り抜く。距離にして実に35m。無回転の強烈な一撃はまず右へ曲がり、ゴールに近づくにつれて左へ滑るようにぶれていく。 ゴールネットが揺れたとき、時計の針はまだ19秒にしか達していなかった。ロングシュートに反応する時間が十分にありながら体勢を崩し、指先で触ることすらかなわなかったヴァンフォーレのGK荻晃太が脱帽の表情を浮かべる。「距離はあったんですけど……自分では(体勢を)修正できませんでした」。 後方で弾道を見ていた昌子が、ブレ球に翻弄された荻の心情を察するように、同期入団の柴崎のスーパーシュートに声を弾ませる。「蹴った瞬間に決まったと思った。荻さんが最初に右へ動いたのもわかる気がする。急に左へ曲がりましたからね。それくらいぶれていた」。 値千金の一発を守り切り、3連勝を飾った直後に、柴崎はクールな表情を崩すことなく今シーズン5ゴール目を振り返った。「立ち上がりということもあって、思い切って打っていこうと。前節の試合で攻撃的な姿勢が薄れていたので。こぼれ球を拾ってショートカウンターを仕掛けるのは、よくあること。3つくらいパスの選択肢があったけど、ファーストタッチでボールをいいところに置けたので、自分の体の反応に合わせて、あまり深く考えずに打ちました。タイミングがよかったし、いいイメージもあった。上手くいってよかった」。 今月11日に行われた就任会見で、日本代表のハビエル・アギーレ新監督はベースとなるフォーメーションを「4‐3‐3」とすると明言した。3人で形成される中盤は、アギーレ監督に率いられてワールドカップを戦ったメキシコ代表を見る限りでは、アンカーを配置した逆三角形型となる可能性が高い。