イチロー「(強豪校は)全く眼中にない、相手とも思ってない」超激戦区に挑む大阪の球児に強烈助言「僕は本気だから」再びイチ流指導
イチ流指導!重要なのは「股関節」
ウォーミングアップが始まった。走塁練習を見ていたイチローさんが駆け寄っていく。 イチロー:すごくいい練習してる。今やってるのは打球判断だね。しっかり足で土をつかんで止まるのが大事。僕の場合は股関節を割って、そこに上半身を入れる。守備にも応用できる。 身振り手振りで、実際に動いて見せるイチローさん。真剣なまなざしで聞く部員たち。 イチロー:投げる時も打つ時も股関節を割って。判断が劇的に変わる。冷静に判断できるようになる。止まる動きを目指して。ニュートラルに止まっている状態を目指して、そこから動く。 ベンチ前で、2年生の山崎寛吾選手に話しかけた。 イチロー:ムードメーカー! 山崎:聞いてますか? イチロー:ハハハハハ(笑)オーラ出てる。 山崎:ありがとうございます! イチロー:ちなみに僕の好きなカレーは、ビーフ抜きのビーフカレーです 山崎:ホンマですか。ビーフ抜き。 イチロー:つまりルーしか見えてない状態。 山崎:僕はお母さんのカレーが好きです。 イチロー:聞いてないけどね。頼むよ、ムードメーカー(笑) 山崎:すみません(笑) イチロー:いいよ! 山崎:ありがとうございます! 場が一気に和み、部員たちもイチローさんを質問責めに。「バッティングのタイミングはどう取っていますか?」「バッティングの時に体が開いてしまうんですが?」「下半身を使うっていう感覚が分からないんですが?」一つ一つの質問に身振り手振りを交え答えるイチローさん。
イチ流アドバイス「平常心では向かえない」
技術的な質問が多かったが、2年生の岩崎大悟選手は精神面を聞いた。 岩崎:WBCとか絶対逃げることのできない絶対大事な場面に直面してきたと思うんですけど。 イチロー:逃げたいけどね(笑)逃げたいんだよ、俺も。でも、やるしかないからさ。 岩崎:そういう時って最高のパフォーマンスをしなきゃいけないと思うんですけど、そういう時に成功するために考えていることがあれば教えて頂きたい。 イチロー:平常心で向かえないってことは知っておいてほしい。そこ目指す人、すごく多いんだよね、練習と同じようにって。できない、残念ながら。練習をゲームに見立ててってことは大事なことなんだけど、実際には限界があるでしょ。 岩崎:はい。 イチロー:ゲームを練習の一部って見立てられたら、それを克服できるかもしれない。ゲームが練習とはなかなかなれない。でも練習の一部だという考え方があれば、実際の本番でそれがいきるかもね。練習をいくらゲームで見立ててやっても、それは難しいと思う。練習には限界があると思う。実際のゲームでそういう気持ちになったら、まずそれで向かってほしい。 岩崎:はい。 イチロー:してほしくないのは、自分のリズムを壊すこと。プレッシャーがかかって緊張する。動揺する。で、いつもやってるリズム、打席までの歩数とか決まってると思うんだよ。自分のリズムを壊さない。それを絶対に守ってほしい。それを崩しちゃうと、打席に入った時にワケ分からなくなっちゃうんで。相手がいて、難しい状況があって。見た目は、平常心に見えるような動きを目指してほしい。そうすると打席に入った時に(ピッチャーは)、『あれ、なんか妙に落ち着いてるぞ』そういうことが出てくる。いつもの動きができないと、動きが違っちゃうと、全部が崩れるから。それは守って、自分のリズムを。 岩崎:それはやっぱりイチローさんがいつもやってるルーティンを。 イチロー:すごく大事。あとはベンチにいる時から難しい状況になることをイメージすることも大事。そうすると『あ、これ来たな、想定内だな』っていう風になれるから。『これ難しい場面になりそうだな』って、そういう気持ちで行くとネガティブな感じになる。難しい状況で自分が回ってくる。そういうイメージトレーニングはとても大事だと思う。そこで結果を出す、で、自信をつけていく。僕はそうやってやってきました。 岩崎:はい。 イチロー:最初からできたわけじゃない。いい場面で何回もやられてきたから。ほとんどやられてきたから。平常心で向かうっていうのは捨ててほしい。最終的にそれを繰り返してたら、そこに近づけるっていう話。怖くなくなる、その状況が。『よし、来いって』ゲームの中の一部が練習だって、その感覚が持てたらいい。その感覚を持てたらレベルが上がると思う。 トスバッティングでは「みんなのバッティングを見てたら、手でコントロールしてる人がすごく多い。僕は下半身を使ってる。足を使う」と言って、実際に自分のスイングをしてみせる。フリーバッティングでも、イチローさんは校舎越えの当たりを連発。「えぐっ!打球の上がり方が全然違う」打球の速さに目を見開く部員たち。 イチロー:大阪の強いチームとやるとさ、レフト前ヒット、ちょっとライン際で二塁打いかれるでしょ。それやられると、一気に自分たちとはレベルが違うって思わない?メンタルがやられるよんだよね。甲子園見てても多いよね、強いチームは狙ってくるし。一瞬でセーフになるって彼らは分かってる、肌感覚で。それくらいの差がある、現在地は。最初に話したことと繋がるけど。それは知っておいてほしい。何だったら大冠にそれをやってほしいんだけど、現状だと難しいと思う。 練習の最後も厳しい言葉で締めたイチローさん。「気になったのは上半身を使う選手が多い。今日家に帰って整理して、また明日やりましょう」と話し、部員たちは「ありがとうございました!」と一礼し1日目を終えた。