日本経済総予測2025 NTTドコモの「銀行参入」で競争激化へ メガバンクも個人金融再編 高橋克英
NTTドコモの買収先として住信SBIネット銀行の名が挙がる。通信と金融の再編は今後、さらに加速しそうだ。 ◇メガバンクも巻き込んだ覇権争い 国内スマートフォン市場の飽和状態など、通信事業の伸び悩みを見越して、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI、楽天の大手スマホ4社は、金融事業など非通信事業を強化し、ポイント経済圏による顧客の囲い込みを急ピッチで進めている。2025年は、出遅れていたNTTドコモの“覚醒”により、メガバンクも巻き込んだ覇権争いは激しさが増しそうだ。 NTTドコモは24年1月にはマネックス証券、同年3月にはオリックス傘下の個人向けローン会社のオリックス・クレジットをそれぞれ子会社化しているものの、グループ内に要となるネット銀行を持っておらず、金融事業で出遅れてきた。こうした中、NTTドコモの前田義晃社長が「銀行業への参入」についてたびたび言及している。 グループ内にネット銀行があれば、ポイント経済圏と連動する形で、個人のメインバンクとして長期的な顧客の囲い込みが期待できる。スマホ料金の支払口座だけでなく、クレジットカードやQRコード決済による決済口座に加え、給与振込口座や住宅ローン口座も獲得できるからだ。「NTTドコモ銀行」誕生には、①既存銀行買収か、②新銀行設立──が考えられる。 既存銀行の買収では、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)傘下のみんなの銀行、セブン銀行などの名前も挙がる中、最有力候補とされるのが楽天銀行と並ぶネット銀行最大手の住信SBIネット銀行だ。23年3月の東証上場でSBIグループの出資比率が34.19%に低下し、銀行機能を提携企業に提供する「ネオバンク」事業など自主独立路線も進めてきた。 一方、新銀行設立では、システム構築などコスト負担に加え、金融当局への認可対応で時間がかかる点がネックだ。いずれにしても、「NTTドコモ銀行」の誕生により、全国展開するドコモショップを活用することで、他陣営よりも保有比率が高いプラチナやゴールドカードを持つシニア・富裕層向けに対面での資産運用サービスを展開することもできよう。