1ドル147円台まで円高が進む:マイナス金利政策解除後の金融市場のリスクを浮き彫りに
市場は3月マイナス金利政策解除の観測を強めた
3月7日の東京市場で、ドル円レートは1ドル147円台後半まで円高が進んだ。これは、2月7日以来1か月ぶりのドル安円高水準であり、日本銀行が3月の金融政策会合でマイナス金利政策解除に踏み切る、との観測が強まったことを受けたものだ。円高の結果、日経平均株価も一時500円超の大幅下落となった。 ドル円レートは2022年と2023年に1ドル151円台までドル高円安が進んだ後、円高方向に振り戻された。今年2月には1ドル151円台目前と、ほぼ同水準まで円安が進んだが、この水準でドル高円安の流れが阻まれることが3回繰り返されることになれば、この水準は強い抵抗ラインと市場で意識されることになるだろう。その結果、ドル円レートはその後は円高方向に振れやすくなることが考えられる。 3月7日に日本銀行のマイナス金利政策解除が3月に行われるとの観測を市場が強める材料とされたのは、第1は、同日に発表された1月の実質賃金の下落幅が予想外に縮小したことだ。しかし、これは一時的な統計の振れによるところが大きく、賃金と物価の好循環の実現、あるいは実質賃金の早期プラス化の可能性が高まった訳ではない。これは実際には、日本銀行の政策判断に直接的に大きな影響は与えないだろう(コラム「1月の実質賃金下落幅は縮小も上昇まではなお遠い:日銀のマイナス金利政策解除の時期決定に大きな影響はない」、2024年3月7日)。 第2は、連合が、今年の春闘における参加労組の賃上げ要求が5.85%と30年ぶりに5%を上回った、と公表したことだ。しかし、日本銀行のマイナス金利政策解除の判断に大きな影響を与えるのは、賃上げの妥結水準であり、要求水準ではない。さらに昨年の春闘で、賃上げ率は30年ぶりの水準に既に達していた。 第3は、日本銀行の審議委員が講演で、「(2%の物価目標達成に向けて)着実に歩みを進めている」、「賃金と物価の好循環が展望できる」などの発言をしたことだ。しかし、マイナス金利政策解除の時期に関わる発言はしていない。 こうした点を踏まえると、3月7日の金融市場が日本銀行の3月のマイナス金利政策解除の観測を一気に高めたことは、強い根拠に基づいたものとは言えないだろう。