「スカイライン黒歴史?」メルセデスベンツのエンジンが載った12代目は迷走していたのか
1957年に富士精密工業(プリンス自動車工業)から発売され、1966年の日産自動車との合併以降もその名を引き継ぎつつ、68年にもわたって生産しつづけられている、日産「スカイライン」。 絶滅危惧FRセダン「マークX」はチョイ悪オジサンだけのものではなく、実は平成名車 まさに日産を代表するモデルといえるスカイラインだが、実は2013年から2019年まで、あのメルセデスベンツ(当時はダイムラー)のエンジンを搭載したモデルが存在していた。 なぜ日産が、自車の誇りであるはずのスカイラインに、他メーカー製のエンジンを搭載していたのか。そこにはこんな理由があった。
■ダイムラーエンジン採用にはルノーの影響があった
2013年11月より販売開始となった、通算13代目となる現行V37型スカイライン。「走りの質が高い」と評判だった先代V36スカイラインの後継であり、大きな期待がかかっていたのだが、登場した姿に、ファンはどよめいた。 日産は当時、このV37スカイラインについて、「V37スカイラインは、海外向け高級車チャンネルであるINFINITIで培った高い技術力やデザインを投入したモデルである。その証しとして、フロントのエンブレムをINFINITIバッヂとし、車名も「日産インフィニティスカイライン」とした」としていた。ファンの間で「スカイラインの証」といわれていた丸目四灯のリアテールランプもなく、片側に2つのL文字が並んだデザインが採用されていた。 そしてパワートレインには、日産製の3.5リッターV6エンジン+ハイブリッド(2010年、Y51フーガで新開発)に加えて、冒頭で触れたようにダイムラー(当時)製の2.0リッター直4ガソリンターボエンジンも採用されていたのだ。 「スカイラインが他社製のエンジンを積む!?」という衝撃は、一部のファンにとって受け入れがたいものであったが、これには、アライアンス関係にあるルノーが大きく影響していた。
■廉価グレード用にダウンサイジングエンジンが欲しかった
2010年、ルノー日産とダイムラー(当時)は戦略的提携を発表した。欧州市場での影響力を高めたいルノーが強引に推し進めたとされているが、この業務提携によって、プラットフォームの共用(例えばINFINITI Q30はAクラスのプラットフォームを共用)や工場運営など、いくつかのプロジェクトが立ち上がった。そのひとつに、ダイムラー(当時)から日産へ、高級車向けの縦置きエンジンを供給するプロジェクトがあった。 当時の日産は、スカイラインやフーガに、縦置き型のV6エンジンを搭載していたが、価格面や燃費性能で他社に後れをとっており、(スカイラインなどの)廉価グレード用に縦置き型のダウンサイジングエンジンが欲しかったという。縦置き型とは、エンジンのコンロッド軸とトランスミッション、プロペラシャフトの向きが車両前後方向にそろったパワートレインのことで、前後重量バランスに優れるため高級車によく採用されているユニットだ。 もちろん、日産が自社で新型エンジンを開発することはできただろうが、台数の出ないFR車向けに新開発する予算もないし、採算も見込めない。そこに、「Cクラスにも使う2.0リッターのダウンサイジング直4ターボが手に入る」となったことで、日産は新型のV37へ採用を決定、「200GT-t」というグレードで打ち出したのだ。 しかしながら、蓋を開けてみれば、エンジン単体価格が高額かつ、V37スカイラインを製造する日産栃木工場までエンジンを輸送する必要があったため、200GT-tの新車価格は税込383万円~と、想定より上がってしまった。そのためデビュー当初はしばらくの間、廉価なV36スカイラインの2.5リッターエンジン車(299万円~)を併売していたほど。前述したインフィニティバッヂの件とともに、往年のファンからはもちろんのこと、メディアなどの界隈から「迷走」とボコボコにいわれる羽目になってしまったのだ。