子どものアトピー性皮膚炎は私のせい? 肌をかきむしり夜はかゆくて眠れない…症状を抑える対処法
お肌のトラブル解決外来
皮膚は体調のバロメーターと言われています。「野村皮膚科医院」(横浜市)院長の皮膚科医、野村有子さんが、皮膚を健康に保つ工夫やおすすめのケア方法をお知らせします。 【図解】アトピー性皮膚炎 かゆみを抑える最新治療とは?
アトピー性皮膚炎の患者さんは推計約53万6000人で、皮膚科を受診される方の代表的な病気です。空気が乾燥してくる秋以降は、肌がかさつくため、悪化しやすくなります。皮膚の状態を良く保つには、保湿剤の使い方がカギを握ります。
皮膚の粉がパラパラと
「かいたらダメと言っても皮膚をかきむしるんです。夜はかゆみがひどくなるのか、よく眠れていない様子で……」 10月、4歳の男の子をもつ30歳代のお母さんが、疲れきった様子で診察室に来られました。皮膚を診ると全身カサカサで、シャツをまくると皮膚の粉がパラパラと落ちてきます。あちらこちらに盛り上がったブツブツと赤み、引っかき傷があり、診察中も顔や腕をかくなど、見るからにかゆみがひどそうでした。 「いったい、いつまでこんな状況が続くのでしょうか」「妊娠中に私が食べたものが悪かったのでしょうか」。お母さんは途方に暮れています。
不治の病ではなくなった
皮膚の表面には、異物が体内に入るのを防ぐ「バリア機能」があります。バリア機能が低下し、アレルギーを引き起こす物質が入り込んでしまうと、炎症が起こり、かゆみや赤みが出ます。これが、アトピー性皮膚炎です。子どもの皮膚は、もともと薄くて乾燥しやすいため、アレルギーを引き起こす物質が入り込みやすくなっています。ちなみに、お母さんの妊娠中の食べ物や生活習慣が発症の原因になるということはありません。 アトピー性皮膚炎は、以前は原因不明の不治の病と言われてきましたが、今は適切な治療により、治せるようになりました。ポイントは、大きく分けて「皮膚バリア機能を回復させる」「アレルギーによる炎症を抑える」の二つです。
保湿ケアを親子のスキンシップの時間に
皮膚バリア機能を回復させるには、塗り薬や保湿剤が有効です。ステロイドなどの塗り薬で炎症を抑え、保湿剤で肌のかさつきを改善させます。毎日、塗ることが大切ですが、「塗ろうとすると、嫌がるし、暴れるし、本当に大変」と悩みを抱える親御さんは少なくありません。そこで、塗り方のコツをお伝えします。 【赤ちゃんの場合】 保湿剤は、自分の手のひらにたっぷりめに取り、手のひら全体でやさしくなでるように塗ります。「なでなで、いい子いい子」などと声を掛けながらゆっくりと手を動かすと、赤ちゃんはニコニコ顔に。やさしいタッチが赤ちゃんを気持ちよくしてくれます。親御さんが「面倒くさい」と嫌々塗っているとタッチが強くなってしまい、赤ちゃんの機嫌を損ねてしまいます。 【幼児の場合】 ジッとしていることが苦手な年代なので、話しかけながら行うといいでしょう。私の医院で保湿剤を塗ってあげるときは、まず両腕を出してもらい、「お肌がすべすべになるクリームです。ほら、ポンポン置きますよ」と声をかけながら、ポンポンと腕の数か所に保湿剤をのせていきます。その後、「ぬりぬり! すべすべ!」と言いながら、私の手のひらで、片方の腕全体にやさしく塗り広げます。次に、「今みたいにやってみましょう」と、もう片方はお子さん自身の手で塗ってもらいます。「やさしく手を動かすように」とアドバイスをして塗り終わったら、「わあ、上手にできましたね」と褒めてあげます。お子さんが遊び感覚で「ぬりぬり」することを覚えてくれたら、最後は親御さんの出番です。「ぬりぬり、きれいきれい!」と必ず褒めてあげてください。 こうして、手間のかかる保湿ケアを、お子さんとの大切なスキンシップの時間にしてしまいましょう。 塗り薬で改善しない場合は、飲み薬や注射薬の使用を検討します。