「手洗いに数時間」「4日と9日は学校に行けない」 有名俳優や元トップアイドルが相次いで公表…専門医が明かす「強迫症」の知られざる実態
潔癖症との混同
強迫症の文献記録は相当昔まで遡れるようだが、うつ病などに比べると不思議に認知度が低い。 ちなみに坂上忍、岡田将生、菜々緒といった芸能人が「潔癖症」として注目を集めることがあり、これが影響を与えているのではないかと指摘する識者もいる。 「手を長時間、洗ってしまう」と聞くと、「潔癖症でしょ?」と早合点する人が少なくない。こうした誤解が、強迫症に対する正確な理解や、社会的認知の広がりを妨げてきた可能性があるという。 強迫観念の内容は多岐にわたる。「家の戸締まりを忘れてしまったのでは?」、「鍋を火に掛けっぱなしにしてきたかも?」という不安なら、「私にも同じ経験がある」と思う人は多いだろう。 だが、例えば「自分の特定の行動で、家族に危害が及ぶかもしれない、巨大地震が発生するかもしれない」という強迫観念になると、共感する人は大幅に減るに違いない。その場合の強迫行為として、納得のいく行動ができるまで繰り返したり、「そんなことは起こり得ない」と頭の中で考えを巡らせる(打ち消し行為)を行う。
罹患率は50人に1人
さらに「玄関に鍵をかけたのか強い不安に襲われ、出勤のため最寄り駅に到着したが、不安に耐えきれず、自宅に取って帰って戸締まりの確認を行った」──といった場合でも、自動的に強迫症との診断がなされるわけではないという。 「診断を考慮する際には、『日常生活に支障を来しているか』という観点も重要になります。『鍵を閉め忘れたんじゃないか』、『手がよごれてしまったんじゃないか』、『運転中に誰かを轢いてしまったんじゃないか』という不安を、一時的に頭に浮かべてしまう人は少なくありません。しかし強迫症の特性として、不安を解消するために行う『手を洗い続ける』、『戸締りを入念に行う』、『道を戻って確認する』という強迫行為はどんどんエスカレートし、いつしか日常生活に支障を来します」(同・向井医師) 最初は、数分程度の少し長い手洗いであったり、早く起きて戸締りの時間を確保するといった程度だったものが、強迫行為に費やす時間が徐々に長くなる。ついには、数時間に及ぶ手洗いや入浴、外出に元栓や戸締りを執拗な確認が必要となり、約束の時間に遅刻したり、外に出られない事態に至る──こうなると日常生活に支障を来すようになる。