中国が台湾の漁船と乗組員6人拿捕-緊張高まる恐れ
(ブルームバーグ): 中国海警局は2日、福建省沖合で6人が乗った台湾漁船を拿捕(だほ)した。台湾と中国の緊張が高まるリスクが増している。
台湾の海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)の声明によると、2日夜、金門島付近で操業していた台湾漁船に、中国海警局の船が近づき、乗組員を拘束した。金門島は中国本土から3キロ圏内にあり、台湾が実効支配している。
台湾海巡署は拘束を止めようとしたが、「船がすでに中国の領海深くまで侵入していたため、事態の悪化を防ぐため追跡を中止した」としている。漁船は福建省晋江市の港へ連行された。台湾の中央通信(CNA)によると、乗組員6人のうち1人は台湾人、5人は外国人労働者という。
漁船を巻き込んだ双方の衝突は日常的に起きているが、1月に台湾で頼清徳氏が新総統に選出され、中国政府は台湾への圧力を強めている。中国政府は、頼氏が台湾の独立を推進しているとみている。中国は、必要があれば武力も辞さず、台湾の支配を握るとしている。
中国は5月に頼氏が就任後間もなく、台湾周辺で大規模な軍事演習を行った。
台湾政府関係者はこのところ、中国が頼政権への圧力をかけるため、個人の拘束を増やすのではないかと懸念している。先週、台湾は中国本土への渡航危険情報を上から2番目に引き上げた。中国政府が台湾の「分離主義者」を死刑で脅かす法律を拡大したことを受けたものだ。
加えて、台湾は金門島のように、中国本土から数キロしか離れておらず漁業資源が豊富な海域で、小さな島を多く実効支配している。双方の海上保安当局同士の接触が起きやすい状況だ。
今年2月には金門島付近で、中国籍の漁船が台湾当局の検査を拒否し、追跡を受けている途中に金門付近で転覆した。中国人漁師4人のうち2人は救助されたが、他の2人は死亡した。台湾は「不幸な出来事」に遺憾の意を表明したが、台湾海巡署は合法的かつ適切に行動したと述べた。中国は、この事件が中国と台湾の人々の親善を損なうものだと非難した。