経費でたまったポイント「20万円分」を私的利用…シラ切る“問題社員”に裁判所が下した判断は
こんにちは。弁護士の林 孝匡です。社員がネコババした事件をお届けします。 ーー 何をネコババされたんですか? 会社 「会社がためた20万円分のポイントです」 ーー ネコババの具体的態様とは? 会社 「会社がお酒を購入してポイントがたまっていたんです。そのポイント20万円分をXさんが勝手に使ったんです。掃除機・美容液を買ったり、衣類スチーマーなんか2台買ってますから」 Xさんは解雇されますが、納得がいかず提訴。 裁判所 「解雇OK!」 わかりやすくお届けします。(中央建物事件:大阪地裁 R5.10.19) ※ 争いを簡略化した上で本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換しています
登場人物
▼ 会社 不動産の売買・賃貸などを行う会社 ▼ Xさん ・正社員 ・仕事は総務事務など
事件の概要
▼ お酒の購入を命じられる 上司BはXさんに対して高級ウイスキーの購入を命じました。このお酒は、会社の会長が手土産や接待に使うためのお酒です。 はじめは会社名義で購入していましたが、酒屋から「法人には大量に販売できない」と言われました。 なので、Xさんが個人名義で購入することになりました。もちろん購入本数や銘柄などは上司から指示を受けていました。 ▼ ポイントは次回の購入に使ってね 上司BはXさんに対して「ウイスキーの購入によってどれくらいのポイントがたまりますか?」と尋ね「ポイントがたまるのなら次回の購入の際にすべて使ってください」と指示を出しました。 約1年9か月の間でたまったポイントは約22万円分でした。 ▼ ネコババ! Xさんは誘惑に負けてしまったのでしょう。約20万円も勝手に使ってしまいます。購入した商品は以下のとおりです。 掃除機(5万3900円) 空気清浄機(4万5980円・1万6995円) 電子レンジ 美容液 クレンジングミルク 腕時計 衣類スチーマー(1万5180円を2台) 子ども用ハブラシ イヤホン ▼ シラを切る その後、Xさんは営業部に異動となります。後任者はXさんに対し「ポイントがためられているアカウントのパスワードを教えてください」とお願いしました。 しかしXさんは「忘れました」とシラを切りました。ネコババがバレたら一巻の終わりですからね。 ▼ 上司に反抗的 Xさんは上司にも反抗的な態度をとるような人でした。以下は、判決文にも現れていたLINEのやりとりです。 上司C 「社内の従業員にお茶を出した意味が分からない」 Xさん 「今後もどなたかが来社したら出せる時は出します。それがナニか?」 上司C 「Xさん...勘違いしないでくださいね。ボクはXさんの上司ですよ。上司に対して『それがナニか?』はないでしょう。ちゃんと謝ってください」 Xさんは謝罪しましたが、さらに、 Xさん 「お茶を一杯いれただけで【上司】という刀を振りかざす、以前にも『Xさんの仕事は上司であるボクが決めます』あの時と同じ感覚、またパワハラ」 ーーややこしい奴ですね。 ▼ 業務指示を聞かない 2つのエピソードもありました。 ・上司CがXさんに対して自転車に貼るシールの作成を依頼したが聞かず。 ・表計算ソフトを使えない上司Cに対して、Xさんが「今後はCさんが保管・更新お願いします」と投げ返す。 ▼ 解雇 会社はXさんを解雇しました。 解雇に納得できないXさんは解雇無効を求めて提訴。