新型コロナ余波でベテランに危機感…浦和レッズ主将の西川周作が切実心境「僕が監督なら若手を使うかも」
日本代表としても国際Aマッチ31試合に出場し、2014年のブラジルワールドカップに臨んだ代表メンバーにも名前を連ねた西川自身も、突き上げてくる若手の足音を感じている。昨年11月1日の鹿島アントラーズ戦では、レッズに加入して6シーズン目で初めてリーグ戦の先発を外れている。 このときは特別な事情もあった。直後に敵地で控えていたアル・ヒラル(サウジアラビア)とのACL決勝ファーストレグで、西川は累積警告で出場停止処分が科されていた。代役を担う福島春樹は専修大学から2016シーズンにレッズへ加入しながら、J1でゴールマウスを守った経験がなかった。 おそらくはアル・ヒラル戦へ向けて、敵地カシマスタジアムで大舞台の経験を積ませるための起用だった。アントラーズ戦、そしてアル・ヒラル戦ともに0-1で惜敗したが、特に後者では強敵相手に怯むことなく、一瞬の判断ミスで失点した場面以外ではビッグセーブを連発している。 サンフレッチェ広島時代の2013シーズンから継続させてきた、J1リーグにおける連続フルタイム出場記録が歴代2位となる225試合で途切れた西川だが、残りのリーグ戦やACL決勝第2戦では先発に復帰している。中断前に行われた今シーズンのYBCルヴァンカップ、湘南ベルマーレとの明治安田生命J1リーグ開幕戦でもゴールマウスを守ったが、リザーブには大きな変化が生じていた。 堂々のベンチ入りを果たし、リザーブとしてスタンバイしていたのは浦和レッズユースに所属する17歳で、昨シーズンに続いて2種登録されている鈴木彩艶(ざいおん)。ガーナ人の父と日本人の母との間にアメリカで生まれ、埼玉で育った逸材は身長189cm体重91kgの恵まれた身体をもち、FIFA・U-17ワールドカップだけでなく、昨年は同U-20ワールドカップにも飛び級で招集されている。
もっとも、胸中に危機感を抱くベテラン勢の思いを代弁しながらも、デビューを果たした大分トリニータ時代を含めて、J1歴代で11位にランクされる通算457試合に出場してきた西川から悲壮感は感じられない。ウェブ会見ではトレードマークの穏やかな笑顔を浮かべながら、こう語ってもいる。 「なので、僕も含めてですけど、ベテラン選手はより危機感をもちながらトレーニングを積むことで、チームのレベルアップにもつながると思っています。まだまだ若手の選手には負けられない、という気持ちがあるので、いつも危機感をもちながら生活しています」 伸び盛りの若手選手たちが怖いものなしとばかりにどんどん突き上げ、ベテランと呼ばれる選手たちが徹底的に抗う図式のなかで、チーム全体の成長が加速される好循環が生まれる。トリニータやサンフレッチェで突き上げる側だった西川は、4シーズンぶりの無冠に終わった昨シーズンからの捲土重来を期すレッズを率いるキャプテンとして、下克上が生まれかねない状況をむしろ歓迎する。 「サッカー界を取り巻くいまの状況に関して言えば、サッカーをすることが難しいと自分たちが受け入れることが必要だと思っています。大事なのは自分の、家族の、周囲の、そしていつも応援してくれる方々の健康なので、Jリーグが再開されるときをイメージしながら自主練習を頑張っていきたい」 埼玉を含めた7都府県に緊急事態宣言が発令されたことを受けて、レッズは18日までとしていた、選手やスタッフを自宅待機とするとする活動休止期間を「当面の間」とさらに延長している。ほとんどのクラブが予断を許さない状況に直面しているなかで、若き挑戦者がポジション奪取をうかがう気配を、発奮するための糧に変えながら、西川をはじめとするベテラン勢は再開をみすえて鍛錬を続けていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)