贋作から始まる「美とはなにか」を問う物語 倉本聰脚本「海の沈黙」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。 ■「海の沈黙」 感動した絵画が贋作だったとしたら、その時の気持ちは間違っているのか? 「北の国から」「やすらぎの郷」で知られる脚本家、倉本聰が長年温めてきたという本作は、「美とはなにか」を問う物語だ。 世界的な画家、田村(石坂浩二)は展覧会で展示された自作が贋作と気づく。美術界に激震が走る中、ある事件で姿を消した天才画家、竜次(本木雅弘)の存在が浮かび上がる。竜次のかつての恋人であり、今は田村の妻である安奈(小泉今日子)は、彼を追い北海道へと向かう…。 自作よりはるかに優れた贋作を前にした田村の驚愕と恥辱を、石坂が全身で表現する場面から物語が動き出す。最近の邦画には珍しい熱量のある「大きな物語」だ。本木と小泉、竜次を長年支える謎多き男、スイケンを演じる中井貴一など実力派俳優が多数出演。美を巡るさまざまな人間模様が描き出される。 風格のある作品だが、田村と竜次、竜次と安奈の葛藤はもっと見せるべきだったのでは。また、若松節朗監督の演出は、中盤から熱がこもり過ぎ、やや大仰なものになってしまった。 22日から全国公開。1時間52分。(耕) ■「六人の噓つきな大学生」 同名小説を「名も無き世界のエンドロール」などの佐藤祐市監督が映画化。就職試験の最終選考に残った6人の大学生は友情を温め合うが、課された最終審査は「自分たちで合格者を選べ」。そして彼らは、会議室という密室で6通の怪しい封筒を見つける。そこには、各人の噓と罪が記されていた。 青春ミステリー。犯行動機が最後まで伏せられているので、犯人当てより、先の読めない展開をハラハラしながら楽しむのがよい。 浜辺美波を筆頭に赤楚衛二、佐野勇斗…と今をときめく若手俳優たちが6人を演じ、芝居をぶつけ合うのも見どころ。果たして彼らの噓は罪なのか? 22日から全国公開。1時間57分。(健)