贋作から始まる「美とはなにか」を問う物語 倉本聰脚本「海の沈黙」ほか3本 シネマプレビュー 新作映画評
■「ふたりで終わらせる IT ENDS WITH US」
世界的なベストセラー小説を、俳優のジャスティン・バルドーニがメガホンをとって映画化。バルドーニは主人公の相手役という重要な役で出演もしている。
原作は恋愛小説をうたうが、作家の半自伝的な内容で家族やパートナーからの暴力を扱う。映画も、それらの主題に正面から誠実に取り組んだ。
恋愛要素の案配が、評価を分けるかもしれない。暴力という負の連鎖を「ふたりで」終わらせようというのなら、小欄にはラストシーンは蛇足に思えるが、どうだろう? 主人公の幼少期の記憶を小出しに現在の場面に割り込ませて見せる手法もやや分かりづらいが、いずれにせよ話題作だ。米映画。
22日から全国公開。2時間10分。(健)
■「チネチッタで会いましょう」
時代の変化についていけず、仕事も家庭もうまくいかない映画監督の姿をコメディータッチで描く。ナンニ・モレッティ監督が、自身の集大成として製作、主演も務めた。
自作の製作が始まった映画監督のジョヴァンニ(モレッティ)。しかし、長年連れ添った妻からは離婚を切り出され、プロデューサーは資金が枯渇。さらに女優は独自の解釈で撮影現場を引っかき回し、何もかもうまくいかない…。
あらゆる場面にフェデリコ・フェリーニ監督作品など過去の名作や自作の引用が散りばめられている。映画愛に満ちた作品で、端正にまとまっているが、小ぢんまりとし過ぎで物足りなさも感じた。伊・仏合作。
22日から全国公開。1時間36分。(耕)