1億円超えマンションの「スペック」から見る「資産価格」
◇「予測は100%ではない」だからやる意味がある 2011年の東日本大震災のあと、タワーマンションは一時値下がりしました。しかしそれも一瞬のことで、現在の価格が右肩上がりなのは前述のとおりです。これは「高層階の眺望」が、一部の人たちにとって価値のあるスペックになっているからです。これらが高い価値を持つかどうかは個々人の好みによって変わってきます。でも自分に本当に必要なスペックは何かということを考えると、物件も少し選びやすくなるのではないでしょうか。子育て世代なら教育インフラや買い物の利便性、共働きなら会社へのアクセスなど。自分にとっての適正価格を考えるには、不動産が持つさまざまな機能を分解してスペックの集合体として捉えても良いかもしれません。予算の中で優先順位をつけていくと、例えば「眺めがいい高層階」というスペックにより多くを払うことが重要か、ということも判断しやすくなるはずです。その他の買い物でも、このスペックの意識は重要だと思います。 また資産とは、本来それを所有しているときの収益で捉えるべきものです。たとえば株券なら、持っていると企業からの配当がありますよね。農地の買値も、そこで作物を作ったときにどれだけ収益があるかの予測で決まります。不動産も収益がベースになって価値がつくもので、スペックから受ける恩恵もその収益の一環ですが、これと価格が乖離し始めると危惧されるのがバブルです。都心のマンションの価格上昇も不動産バブルといわれますが、これが巷間のうわさのように海外投資家の影響が大きいなら、海外経済の動向も注視しておかなければなりません。 グローバル化によって世界経済との連動性が強くなった今は、日本の不動産市場の状況を知りたい海外投資家のニーズも増えていると感じています。きちんとした予測情報を提示することで、外国からお金を呼び込んだり、雇用創出や経済成長にも寄与したりすることもできるはずです。 予測は予測でしかなく、100%当たるものではありません。しかし、正しい情報をもとにした精度の高い予測が必要な人に届き、意思決定に活用されれば、その先の人生や社会がよりよく変わっていくと思います。
山村 能郎(明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授)