1億円超えマンションの「スペック」から見る「資産価格」
山村 能郎(明治大学 専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 教授) 都心のマンション価格は留まるところを知らず、とくに人気エリアの高層階などは、庶民には手の届かないものになりました。超高額物件でなくとも、国民一人ひとりの住宅事情に直結する不動産の値段は、日本の豊かさ「国富(こくふ)」と密接につながっています。経済における不動産の「資産価格」とは何なのか、自分にとっての「価値」とあわせて考えてみませんか。
◇「資産価格」は経済の健康状態を測る目安 2023年、東京23区の新築分譲マンションの平均価格が1億円を超えたことが話題になりました。都心の新築マンションはこの10数年で2倍近い価格上昇を見せており、「一体誰が買うんだろう」と思ってしまいますが、例えばこうしたニュースを見るときにも必要なのが「資産価格」の考え方です。 現代社会にはさまざまな形の「資産」があります。GDP統計などの国民経済計算上では、資産は株券や預貯金などに代表される「金融資産」と、土地や建物など不動産のような「非金融資産」に大別されます。それがさらに「生産資産」と「非生産資産」に分類されるなど、資産には身近なものから複雑なものまでいろいろあるのですが――とにかくそうしたすべての資産につく値段が「資産価格」です。なぜこれが重要かというと、国の経済の健康状態を見るための目安になるものだからです。 国民全体の資産から負債を差し引きした実際の資産のことを「国富」と表現します。日本の国富は23年末で約4千兆円となり、そのうち半分が土地などの不動産だとされています。つまり、日本の経済および国富は、不動産価格の影響を受けやすいのです。 仮に現金の1億円をタンス預金していたとしましょう。翌年には物価変動によって実質的な価値=購買力は変動しますが、1億円という名目的な値は変わらず、ずっと1億円のままです。しかし不動産の場合は何年も前に買ったものだと、売買取引されない限り現在の値段を正確に測ることはとても難しい。なおかつ資産価格を示す貸借対照表には、何十年も前の購入時の値段しか書かれていないわけです。 不動産の資産価格はとても実態がつかみにくい。だからといって曖昧なままにしておくと、場合によっては大きく目減りしていても気付けないなど、リスクになりかねません。それに不動産は日本の国富の多くを占めるもののため、この価格をしっかり予測していくことは、日本経済を把握するうえでも大切です。