三井金属、来年3月に八戸製錬でCO2回収技術現場試験
三井金属は20日、ESG説明会を開催した。三池製錬(福岡県)で試験を進めているバイオマス燃料による石炭代替や八戸製錬(青森県)での代替燃料活用によるコークス使用量削減、工場の排ガスからのCO2回収技術開発など、CO2排出量削減に向けた新技術導入の進ちょく状況なども紹介した。CO2回収技術開発について納武士社長は「当社が開発中のCO2吸着剤を利用した小型の試験モジュールを八戸製錬所に設置し、来年3月から現場試験を実施する予定だ」と説明した。 三池製錬では、製錬工程で使用している石炭・コークスをバイオマス由来の燃料に転換するための技術開発を進めている。今年9月にはバイオマス燃料70%操業を実施し、実現性を確認した。今後はコストや供給安定性などを踏まえた新規バイオマス燃料の探索や供給先の確保などに努める。また、八戸製錬など他の製錬所への展開に向けた課題解決などに取り組む。 八戸製錬では、製錬工程で使用しているコークスの一部をLNGに転換する取り組みも進めている。羽口と呼ばれる熔鉱炉底部にある吹き込み口を改造し、今年8月にLNGの吹込みテストを実施して安全性を確認した。現在は2024年度以降の実証試験への移行に向けてLNGの燃焼によって生じた水蒸気による亜鉛の再酸化への影響評価などを進めている。 CO2回収技術開発では、独自開発のCO2吸着剤を用いて工場の排ガスからCO2を吸着・脱離するCO2回収分離システムの開発を進めている。30年度以降の実用化に向けて24年度からベンチ試験を開始し、25~29年度にはスケールアップしたパイロットプラントでの実証を行う計画。 一方、事業創造本部が育成を進める新規製品では、脱炭素社会に貢献する商品として、全固体電池向け固体電解質や次世代半導体実装用特殊キャリア、パワー半導体向け銅ペーストの3商品を紹介。パワー半導体向け銅ペーストについては小規模量産設備の導入が完了し、サンプルの引き合いも増えている。納社長は「世界的にパワー半導体市場の拡大が見込まれており、従来の銀ペーストに比べコスト面で優位性がある。銀ペーストからの代替が進めば一気に量が増える可能性もある」との見方を示した。