「高齢者泣かせだ」「よく長蛇の列ができてる」との声も…。セブン、苦戦報道で「不親切なレジ」への批判が沸騰する背景
人文地理学者のイーフー・トゥアンは、ある場所を捉えるとき、数字上のデータだけを見るのではなく、そこにまつわる人々の「情感」や「愛着」までをも捉えなければならない、という。まさに経営でも同じことが言えるだろう。(イーフー・トゥアン「空間の経験」/1993年・ちくま学芸文庫) ある場所を人が使うのは、合理的な理由だけで片付けられるものではない。つまり「自動化」だけでは解決できない、もっと情緒的なものも絡んでくる(まさに「人の手」だ)。それを踏まえた施策が求められているのではないか。ディストピア容器の件はこれを端的に表している。そして、それはセブンの半有人レジでも同じだ。
■ファンの心を繋ぎ止めつつ、合理化を進められるか? 冒頭で示した通り、セブン苦境の原因は北米事業の躓きにあり、こうしたレジの問題は直接の原因ではない。しかし、重要なのは、そこに使いにくさや「人の温かみがない」と感じる人々がいること。 ただ、現在はDX化への変化の途中で日本全体の人口も減少している。過剰なサービスをし続けることは難しくなるし、一歩間違えばそんな要求は「カスハラ」案件にさえなりかねない。「温かみを」といったところで、物理的にそれが不可能になる時代が到来するかもしれない。それに、高齢者も徐々にセルフレジの方式に慣れていくのは間違いない。
そんな中、企業として、どのように「合理化」と「人の手」のバランスを取っていくのかが問われているのだろう。 逆に、今回のセブンのレジに対する反応をみていると、その「合理化」と「人の手」のバランスを取るのに失敗してしまったのかも? とも思えてくるのだ。 前回の記事を読む:セブンの「上げ底弁当?」が今また“猛烈批判”の訳 値上げによる客離れを恐れ、ファン離れが発生か ■ちなみにセルフレジはこんな感じ
谷頭 和希 :チェーンストア研究家・ライター