個人的パリ五輪ベストゲームは大興奮の4継リレー 【アフロスポーツ プロの瞬撮】
スポーツ専門フォトグラファーチーム『アフロスポーツ』のプロカメラマンが撮影した一瞬の世界を、本人が解説、紹介するコラム「アフロスポーツの『フォトインパクト』」。他では見られないスポーツの一面をお届けします。 僕のこの目で見た中でのパリ五輪のベストゲームは男子4継リレー決勝だ。 理由は様々あるが、とにかく桐生がカッコ良かった。 予選・決勝ともに2走・3走のリレーポイントを撮影していた。 これも理由は様々あるが大きな要因は2つだ。 一つ目はフォトポジションの都合上、まともにバトンパスを撮れるのがここしか無かったこと、 二つ目はそこに桐生が配置されるだろうという予想があったからだ。4継の桐生といえば3走だ。 3年前の東京五輪から繋がる物語を考えれば、ここは撮るべきポイントだと思っていた。 決勝では、サニブラウンが2走に入ったことも僕にとっては幸運だった。 日本が誇る短距離界の2大スターのリレーは夢が溢れるバトンパスだ。そのサニブラウンから スムーズにバトンを受け取った桐生はめちゃくちゃ速かった。実際にはどうなのか分からないが、 現場ではそう感じた。決勝は3レーンだったので、アウトレーンに日本より大きくリードしているチームがあると、その選手と桐生が被ってしまう。実際、予選ではそうだった。しかし決勝はそうならず、 桐生が前の方でレースをリードしていたからこそ、長時間、桐生を撮る事が出来た。 (長時間といっても2秒とか3秒とか、そのくらいの時間ではあるが。) 強者のアメリカが前のバトンパスで大きくもたついたこともまた僕にとっては幸運だった。 桐生が通り過ぎると、走り終わったサニブラウンが叫んでいる。 それを撮って、桐生からバトンを受け取った後のレースの行方を少しの間、肉眼で見た。 間もなく、サニブラウンが膝から崩れ落ちたのを横目で見た。 報道カメラマンとして、その様子も撮る事が求められるかもしれないが、仕方ないと思えた。 単純に自分も熱くなっていたため撮り逃したのだが、こんなに興奮しながら楽しく撮影したのは 初めてだった。レースが終わる頃には清々しい気持ちさえあった。 そんな気持ちにさせてくれた4継の選手達には感謝しかない。 後から写真を見返してみたら、桐生は予選と決勝で違う顔になっていた。 予選と比べると決勝の時は、目つぶりの回数や少し節目がちになる回数が少なく、 使える写真の枚数が多かったのだ。前に前にという意識と集中力が上がっていることを感じた。 ■カメラマンプロフィール 撮影:長田洋平 1986年、東京出身。かに座。 早稲田大学教育学部卒業後、アフロ入社。 2012年ロンドンパラリンピック以降、国内外のスポーツ報道の現場を駆け回っている。 最近では平昌オリンピック、ロシアW杯を取材。 今年の目標は英語習得とボルダリング5級。
アフロスポーツ
1997年、現代表フォトグラファーである青木紘二のもと「クリエイティブなフォトグラファーチーム」をコンセプトに結成。1998年長野オリンピックでは大会組織委員会のオフィシャルフォトチーム、以降もJOC公式記録の撮影を担当。 各ジャンルに特化した個性的なスポーツフォトグラファーが在籍し、国内外、数々の競技を撮影。放送局や出版社・WEBなど多くの報道媒体にクオリティの高い写真を提供し、スポーツ報道、写真文化の発展に貢献している。