ユネスコの「体にいい」無形文化遺産5選、健康飲料「ジャムゥ」ほか、保護される伝統医療
マッサージ、タイ
タイの観光地にはマッサージ店が乱立しているため、外国人はともすればタイマッサージを単なる営利目的の事業と捉えてしまうかもしれない。 しかしヌアット・タイ(タイ古式マッサージ)は2500年の歴史を持ち、タイ文化の柱とも言える存在だ。多くの家庭でも実践されているマッサージを、タイの人々は芸術と科学が融合したものとして誇っている。 ヌアット・タイのマッサージ師は手、足、ひざ、ひじなどを巧みに使って、患者の体をもんだり、曲げたり、伸ばしたり、絞めつけたりする。こうすることで体にある7万2000本の「セン」というエネルギーの通り道を刺激し、健康状態を改善させる。タイ仏教の考えでは「セン」の通りをよくすることで、水、風、火、地という体の中の4つの元素のバランスが整えられる。 旅行者はプーケットやチェンマイなどに数多くあるヌアット・タイのマッサージ店で体をほぐしてもらうといいだろう。あるいはバンコクにある「ヌアット・タイ・マッサージ・スクール」でその技を学ぶこともできる。
鍼(はり)、中国
人の体に細い鍼(はり)を刺す習慣はおよそ5000年前に中国で始まった。背景には中国古代哲学がある。この治療法には、体の中の陰と陽のエネルギーのバランスを整える働きがあるとされる。 鍼もヌアット・タイと同様に、生命力の流れの滞りを取り除き、心と体の健康を取り戻すことを目的としている。「気」と呼ばれる生命エネルギーは、主要な臓器を結ぶ12本の経脈(けいみゃく)を流れるとされる。 鍼師は通常、5本から20本の細い鍼を患者の皮膚の経穴(けいけつ、ツボ)に刺入(しにゅう)することで、片頭痛、筋肉痛、呼吸器疾患から生理痛まで治療する。鍼治療によって、いわゆる「幸せホルモン」の1つであるエンドルフィンが分泌されるという研究もある。 中国を訪れた旅行者は、たとえば上海にある「ボディアンドソウル・メディカルクリニック」の2つの支店で鍼を体験できる。